今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、名鉄広見線の一部線区を2025年6月にも存廃判断することが明らかになった話や、運行休止を決めた弘南鉄道大鰐線に対する公的支援について弘前市が休止予定の2027年度末まで支援する考えを示した話など、鉄道に関する沿線自治体のニュースをまとめてお伝えします。
名鉄広見線への公的支援が打ち切りか?2025年6月に存廃判断へ
【2024年12月11日】岐阜県御嵩町の渡辺町長は、公的支援を受けながら運行を続ける名鉄広見線の新可児~御嵩について、名鉄から「支援の協定を更新しない」と伝えられたことを明らかにしました。
名鉄と沿線自治体は、該当線区の赤字補てんなどの支援に関する協定を2010年に締結。自治体負担額は年間で約1億円になります。協定は定期的に更新されてきましたが、2024年夏に名鉄が「現在の協定では鉄道の維持が難しい」として、2025年度末で更新しない考えを伝えたそうです。
御嵩町や可児市などの沿線自治体は、すでに名鉄と協議を進めており「みなし上下分離による鉄道の存続」か「バス転換」かで検討しているようです。協議の結論は、2025年6月に出す予定です。
【解説】みなし上下分離か?バス転換か?名鉄広見線の将来は?
名鉄広見線の新可児~御嵩(7.4km)は、いわゆる盲腸線の末端区間にあたります。名鉄は2006年より、沿線自治体との協議を開始。2007年11月には、利用者の減少に歯止めがかからないことや年間赤字額が2億4,600万円(2006年度)になることなどを理由に、「今のままでは鉄道を維持できない」と、沿線自治体に伝えます。
その後、沿線自治体が該当線区の赤字を補てんすることが決定。2010年度より可児市が約3,000万円、御嵩町が約7,000万円を支援し、広見線を維持することになりました。また、沿線自治体は利用促進にも協力。学校行事などで広見線を活用させたり観光キャンペーンを実施したりと、さまざまな施策に取り組みます。
しかし、沿線地域の少子化や過疎化、モータリゼーションの進展などの影響で、利用者は減少の一途をたどり続けます。新可児~御嵩の年間利用者数は、2010年度が約100万人でしたが、2014年度には90万人を割り込みます。その後は80万人台で推移し、減少に歯止めがかかりますが、名鉄の経営的には厳しい状況が続いていたのです。
2024年夏、名鉄はこれまでの支援にくわえて「今後15年間で17億6,000万円の追加支援が必要」と、沿線自治体に説明します。支援額の詳細は不明ですが、おそらく線路や変電所といった鉄道施設の更新費用を求めたとみられます。
この説明に対して沿線自治体は、広見線の将来について協議を開始。その結果、「みなし上下分離で鉄道を維持」するか、「バス転換」するかの2つに選択肢が絞られたようです。
なお、みなし上下分離に移行したときの自治体負担額は、年間で約1億8,000万円。ほぼ倍増です。御嵩町の渡辺町長は「公費負担の増大の問題が非常に大きい。今後の町政運営や持続可能性を見据え、総合的に判断しなければならない」とNHKの取材で語っており、負担増に難色を示しています。
では、バス転換が現実的かといわれると、そうでもなさそうです。新可児~御嵩の輸送密度は1,672人/日(2022年度)。コロナ禍前は1,900人/日前後でした。しかも、利用者の約8割が通勤通学客ですから、朝夕のラッシュ時に多くのバスを運行しないと利用者をさばけない可能性があります。ドライバー不足が深刻化するなかで、これを引き受けるバス事業者があるのかという課題もみえてくるのです。
頼みの綱は、岐阜県の支援です。仮に、上下分離方式などの事業構造(運営形態)を変更して国の支援を得られたとしても、沿線自治体には重い負担でしょう。県とも連携して国の支援を得ながら存続に導く方法も、検討してほしいところです。
その他の鉄道協議会ニュース
大鰐線の運行休止まで弘南鉄道を支援する方針 – 弘前市が検討
【2024年12月10日】青森県弘前市は、弘南鉄道大鰐線に対する支援について、運行休止まで支援する考えを示しました。これは弘前市議会の一般質問に、市の都市整備部が答えたものです。
弘南鉄道は2024年11月27日に開かれた弘前圏域8市町村長の会議で、沿線に進学する中高生のことを考え「2027年度末まで運行したい」と伝えています。ただ、2021年に策定された沿線自治体の支援計画では、大鰐線に対する支援は2025年度末までとなっています。このため弘前市は、これまでの支援計画とは別に2027年度まで継続させるための新たな支援について検討を始めたそうです。新たな支援については、大鰐町とも今後協議するとしています。
また、運行休止後の代替交通について弘前市は、路線バスやデマンド交通(乗り合いタクシー)などを組み合わせた公共交通網を検討していることも明らかにしました。今後、関係者と協議を進める方針です。
※弘南鉄道が大鰐線の運行休止を決めるまでの経緯は、以下の記事で詳しく解説しています。
JR抜海駅の存廃問題「観光の観点だけで駅を残す判断はできない」
【2024年12月11日】北海道稚内市の工藤市長は定例市議会で、市が管理費を負担しているJR宗谷本線の抜海駅について、改めて廃止にする方針を示しました。
この日の市議会では、議員が「抜海駅は観光客も訪れる。駅の観光的価値について、どのように考えているのか」と質問。これに対して工藤市長は「観光の観点だけでは未来永劫、駅を残すという判断はできない」という考えを示すとともに、沿線住民の利用が極端に少ないことや代替交通のめどがついたことを説明しました。
なお、2024年12月13日にJR北海道がプレスリリースした来春のダイヤ改正では、抜海駅の廃止を伝えています。
※無人駅・秘境駅の管理費や存続させるための活用法について、以下の記事で詳しく解説しています。
山形鉄道で電動車両の開発をめざす実証実験を開始
【2024年12月9日】山形鉄道と長井市などは、老朽化したディーゼル車両を電動車両に改修する、新たな実証実験を始めました。
具体的には、ディーゼルエンジンの代わりにバッテリーや電動モーターを搭載。ソーラーパネルで発電した電力を動力源とする列車に改修します。このしくみについて、長井市の民間企業「ジェットコネクト」などが協力。2024年12月9日には、山形鉄道・長井市・ジェットコネクトの三者が、事業推進に関する協定書に調印しました。
実証実験で改修した電動車両は、1回の充電で150km以上の走行をめざしており、実現すれば2026年以降に山形鉄道で運用する予定です。なお、実証実験の事業費は約3億1,000万円とされますが、CO2削減などの環境対策を推進する事業であることから、環境省が負担するそうです。
京葉線の一部快速の復活に熊谷知事「大変感謝」
【2024年12月14日】千葉県の熊谷知事は、JR東日本が発表した来春のダイヤ改正を受けて「京葉線快速の一部復活などの対応をしてもらい、大変感謝している」とSNSにコメントしました。
京葉線快速をめぐっては、2024年3月のダイヤ改正で朝夕の運行を廃止。千葉県や千葉市などが、ダイヤの見直しを求めていました。これを受けてJR東日本は、早朝の快速2本を維持。さらに2024年9月にも一部快速を復活させる、異例のダイヤ改正を実施しています。
来春のダイヤ改正では、夕方以降の下り快速列車を増便。これについて熊谷知事は、JR東日本に対して一定の評価をしつつ、「京葉線の速達性や利便性のさらなる確保に向けて、課題もある」「こうした課題の解決に向けて、さまざまな方策を検討していただけるよう継続して求めていく」と述べています。