週刊!鉄道協議会ニュース【2024年10月6日~10月12日】

いすみ鉄道の車両 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、いすみ鉄道の脱線事故を受けて千葉県知事が財政支援や存廃に関する意見を述べた話や、阿武隈急行の存廃議論で宮城県の沿線自治体が「存続」で合意した話題など、さまざまなニュースをピックアップしてお伝えします。

いすみ鉄道の脱線事故で千葉県知事「存廃にコメントすることはない」

【2024年10月10日】10月4日に脱線事故を起こしたいすみ鉄道について、筆頭株主の千葉県は「安全確保をしっかりおこなうとともに、利用者に不便が生じないように対応していただきたい」と、いすみ鉄道に伝えたことを発表しました。これは、熊谷知事が定例記者会見で明らかにしたものです。

熊谷知事は、安全対策に対するいすみ鉄道への財政支援について「事故の全容が見えてくるなかで、どのようなサポートが必要なのかを関係者と検討したい」という考えも示しました。

また、いすみ鉄道の存廃に関する意見を記者から求められた熊谷知事は、「中長期的な資金計画への影響を分析したうえで鉄道のあり方について考えていく流れになると思うが、現時点で存廃について、県としてコメントすることはない」と答えました。

【解説】いすみ鉄道に年間2億円を支援する千葉県と沿線自治体

2024年10月4日に、いすみ鉄道の国吉~上総中川で走行中の列車が脱線する事故が発生します。乗客104名と運転士にけがはありませんでしたが、一歩間違えると大惨事になる可能性がありました。そのため、国土交通省の運輸安全委員会が現地に入り、事故原因の調査を進めています。

事故原因は、10月12日現在では明らかになっていません。ただ、事故現場のレールが枕木から外れて横倒しになったことから、保線に何らかの問題があったと考えられます。

いすみ鉄道の古竹社長は10月7日の記者会見で、事故現場付近の枕木に劣化している場所があったことを明らかにしています。また、産経新聞(2024年10月10日)によると、「枕木の腐食と水はけの悪い地盤など、複合的な原因が考えられる」と報じています。なお、今回の事故現場では11月下旬に「PC枕木」へ交換予定だったことも伝えられています。

いすみ鉄道では2013年12月にも、西畑~上総中野で脱線事故が発生しています。このときの事故原因も、枕木の腐食とされました。この事故を受けていすみ鉄道では、耐久性に優れたコンクリート製のPC枕木への交換を進めています。PC枕木は木製より価格が高く、ローカル線では導入が進まない傾向があります。ただ寿命は、木製が10年程度に対してPC枕木は50年程度。長期的なランニングコストを含めると、PC枕木のほうが安くなるケースもあるようです。

こうした枕木交換を含めた鉄道施設の工事費用について、いすみ鉄道は、千葉県と沿線自治体の「基盤維持費補助」という補助金でまかなっています。沿線自治体は、いすみ鉄道が地域にとって大切なインフラの一部であると考え、線路維持などに必要な費用を支援する上下分離方式を、2008年より採用しています。

なお、2019年度からは運行費用(上)の赤字についても沿線自治体が支援しており、自治体負担額は年間で約2億円になります。このうちPC枕木の交換にどれくらいの費用がかかるかはわかりませんが、朝日新聞(2024年10月7日)によると、年300本ほどのペースで交換を進めていたようです。

この事故を受けて、いすみ鉄道は全線で運転を見合わせており、10月末の再開を目指すとしています。行楽シーズンで需要が増える時期ですから、運賃収入の減少が懸念されます。そうした損失を抑える意味でも、PC枕木への交換が急がれるところです。

※いすみ鉄道が存続できる理由や、千葉県と沿線自治体の支援内容について、以下のページで詳しく解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

阿武隈急行の存廃議論 – 宮城県も「存続」で合意

【2024年10月9日】宮城県は、阿武隈急行のあり方をめぐる方針について「鉄道の存続」で沿線自治体と合意しました。BRTやバスなどと比べて、利便性や実現可能性の観点で「鉄道が優位」と判断した模様です。

宮城県と沿線自治体(角田市、柴田町、丸森町)は10月4日に、非公開の会合を開催し、阿武隈急行を鉄道として維持する方針を確認。その後、沿線自治体は10月7日までに鉄路存続で合意します。10月9日には、すでに存続方針を決めている福島県にも伝えました。今後は沿線自治体が、どのような形態で阿武隈急行を支援していくかが焦点になります。

※阿武隈急行が経営難になった経緯や、沿線自治体の協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

ハピラインふくいで「増便」を検討 – 福井県

【2024年10月10日】福井県の杉本知事は定例記者会見で、武生~敦賀の運行本数を増やすなど、ハピラインふくいの利便性を高めていく考えを示しました。

2024年3月に開業したハピラインふくいでは、JR時代より運行本数を増やしていますが、増便されたのは福井~武生が中心でした。武生~敦賀でも増便が図られたものの、日中の本数が少なく沿線自治体から増便の要望が出ていたようです。これを受けて杉本知事は、「県民のための鉄道として、少しでも便利にしていく」と伝えたうえで、来年以降のダイヤ改正で武生~敦賀の増便も「前向きに検討していく」と述べています。

※ハピラインふくいの利用促進などに関する沿線自治体の協議は、以下のページで詳しく解説しています。

指宿枕崎線の商工会・観光協会などを招いた検討会が開催

【2024年10月8日】鉄道のあり方について協議が進められている指宿枕崎線(指宿~枕崎)で、沿線地域の関係者を招いた検討会が開催されました。この検討会には、沿線の商工会や観光協会など約30人が参加。JR九州もオブザーバーとして出席しています。

参加者からは、畜産や水産が盛んな地域の特色を生かして指宿枕崎線の利用促進ができないか、などの意見が出されたそうです。検討会に出席したJR九州の堀江部長は、NHKの取材に対して「鉄道の可能性を模索する第一歩として、多くの意見をいただいた。今後の協議でも参考にしたい」と話しました。

※指宿枕崎線の沿線自治体とJR九州との協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

神戸電鉄で「トレインフェス」開催 – 粟生線の利用促進を呼びかけ

【2024年10月6日】神戸電鉄の鈴蘭台車庫などで「神鉄トレインフェスティバル」が開催され、約3,800人が来場しました。会場では、車両撮影会や洗車機を通り抜ける車両の乗車体験会など、普段は味わえない各種イベントもおこなわれました。

また、利用者が低迷する粟生線の沿線自治体(粟生線活性化協議会)や、登下校などで粟生線を利用する地元の高校生もイベントに参加。「乗ってのこそう未来の粟生線」と書かれた缶バッジの配布や、缶バッジ作りの体験イベントを通して、粟生線の利用を呼び掛けたそうです。

※神戸電鉄粟生線の利用者が低迷している理由や、沿線自治体との協議の流れは、以下のページで詳しく解説しています。

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