今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、JR美祢線の復旧検討部会でJR西日本が「鉄道以外の復旧方法」を提案した話や、北陸新幹線の「小浜・京都ルート」について2025年度中の認可・着工が困難になった話題など、さまざまなニュースをお伝えします。
JR美祢線の「鉄道以外の復旧方法」をJR西が提示 – BRTも一案
【2024年12月19日】美祢線の復旧方針を議論する第3回復旧検討部会が開かれ、JR西日本が「鉄道以外の復旧方法」を示しました。
具体的には、現在も運行している代行バスを継続する「代替バス案」と、一部区間をバス専用道路にする「BRT(バス高速輸送システム)案」の2案です。このうちBRT案は、湯ノ峠~厚保付近の約4.2kmをバス専用道路にする案を示しました。いずれの交通モードも、停留所や運行本数を増やすことで利便性を高められると、JR西日本は説明したようです。
これに対して沿線自治体は「バス専用道路が短く、定時性を確保しにくいのではないか」「具体的な費用や工期を示してほしい」などの意見が出されたそうです。なお費用に関しては、次回の検討会議でJR西日本が示すとしています。
【解説】美祢線のBRT案にJR西は懐疑的?バス専用道区間が短い理由
JR美祢線利用促進協議会に設置された復旧検討部会は、「鉄道で復旧する場合」と「鉄道以外で復旧する場合」を比較検討する協議組織です。前回(第2回)の部会では「鉄道で復旧する場合」について議論され、JR西日本は上下分離方式への移行を提案しています。なお、JR西日本が単独復旧・運行する考えは「ない」ことも伝えています。
さて、今回(第3回)の部会では、「鉄道以外で復旧する場合」について議論。JR西日本は、BRTまたはバス転換したときのルート案を説明しました。いずれも、現在代行バスが走る県道や国道316号をベースとしたルートですが、BRTに関しては県道から外れる湯ノ峠~厚保付近の約4.2kmをバス専用道路に転換するとしています。
なお、現在運行している代行バス(普通便)は、湯ノ峠駅のみ停車しません(代行タクシーが厚狭~湯ノ峠で運行)。これは湯ノ峠駅が県道から外れた位置にあり、所要時間が大きく増えるためです。この状況を解消するために、線路の一部をバス専用道路に整備して湯ノ峠駅にも停車する案を、JR西日本が提示したとみられます。
この案に対して、沿線自治体は「ここしかBRTにしないの?」と、疑問を抱いたようです。BRTのメリットは、バス専用道路を設けることで定時性や速達性を確保することにあります。つまり、専用道路をできるだけ長く設けたほうがメリットを享受しやすくなるのです。ちなみに、他のBRTのバス専用道路の長さをみると、日田彦山線が14.1km、気仙沼線が22.7km、大船渡線が16.2kmです。これらと比べると美祢線は4.2kmと短く、「定時性や速達性を確保できるのか?」と沿線自治体が疑問を抱いたのでしょう。
とはいえ、美祢線は道路と並走する区間が長いですし、バス専用道路が長くなると線路を剥がして道路化する工事費用が高くなります。ちなみに、BRT化の工事費用は意外と高く、1kmあたり数億円規模とされます。定時性などのメリットとコストとのバランスが取れるかが、BRTを採用するポイントとなるでしょう。
また、バス専用道路は美祢線の跡地に整備するわけですから、専用道路が長くなれば厚狭川を渡る橋の数も増えます。そもそも、JR西日本が美祢線の復旧を拒む理由のひとつに、「復旧してもまた災害で橋が流されて不通になる」ことがあります。JR西日本としては、「できるだけ橋を避けたい」という考えもあり、橋があまりない湯ノ峠~厚保付近のみをバス専用道路にしたとも考えられるのです。
もっとも、美祢線はバス転換が決まったわけではありません。鉄道で復旧するという選択肢も残っています。次回の検討部会(2025年2月を予定)では、第三セクターに移行する場合について議論される予定です。今後の協議で、どの復旧パターンが選択されるのか注目されます。
※復旧検討部会をはじめ、沿線自治体とJR西日本とのこれまでの協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
その他の鉄道協議会ニュース
北陸新幹線の「小浜・京都ルート」2025年度内の着工は困難に
【2024年12月18日】北陸新幹線の延伸ルートなどを検討する与党整備新幹線建設推進プロジェクトチームの委員会が開かれ、年内に絞り込むとしていたルートの決定を見送りました。
北陸新幹線の延伸ルートは、2024年8月に国土交通省が新駅の位置を含めた詳細ルートを3案提示。12月18日の委員会で、1つに絞り込む予定でした。しかし、出席者の意見がまとまらずルートの決定を断念したそうです。建設工事の工期や費用の増加にくわえ、工事にともなう地下水への影響などの課題が解決できず、京都府などとの合意形成が難しいことも、ルートの決定が見送りになった一因とみられます。
なお、委員会は12月20日にも会合を開催。3案のうち、JR京都駅の地下を東西に通る「東西案」について、地下水への影響が大きいなどの理由で候補から外すことを決めています。
今後は、JR京都駅の地下を南北に通る「南北案」と、JR桂川駅付近の地下に新駅を作る「桂川駅案」の2案で検討されますが、ルートが決まらなければ建設事業費の予算計上ができません。国の2025年度当初予算案は今年中に計上しなければならず、2025年度中の認可・着工も見送りになる模様です。
JR山田線が全線で運転再開
【2024年12月20日】災害の影響で上米内~宮古が不通になっていた山田線が、全線で運転再開しました。
山田線は2024年8月の豪雨災害で被害を受け、一時全線で不通に。9月には盛岡~上米内で運転を再開しますが、上米内~宮古では土砂流入の危険がある箇所が複数見つかり、運転再開時期は未定とされていました。この箇所について防護柵の設置などの作業を進め、安全が確認されたとして、12月20日から全線で運転を再開しました。
山田線の運転再開を受けて、岩手県の達増知事は「改めて鉄道のありがたみを、地元の人に感じてもらえたと思う。県としては今後、観光利用を増やせるよう魅力を発信していきたい」と語っています。
只見線と会津鉄道で国の補助金申請へ – 地元負担を減額
【2024年12月18日】福島県は、JR只見線と会津鉄道の維持費に国の補助金を活用する方針を決めました。
補助対象は、2025年から2034年までに両線で実施する事業。福島県によると、只見線では上下分離方式を導入した線区(会津川口~只見)で国が3分の1を補助することにより、今後10年で約67億円とされる維持費を約48億円に圧縮できるそうです。また会津鉄道では、約142億円の維持費を約92億円に削減できる予定です。
福島県は2024年内に国土交通省に申請し、来春までに認定を受けるとしています。
ふるさと納税の返礼品にJR加古川線の「一日駅長体験プラン」 – 兵庫県西脇市
【2024年12月16日】兵庫県西脇市はふるさと納税の返礼品に、西脇市駅の「一日駅長体験プラン」を出品しました。
プランの内容は、JR西日本の協力のもと、西脇市~谷川で車内放送や巡回をしたり列車に出発合図を出したりといった駅員体験ができるほか、日本へそ公園駅の近くにある「テラ・ドーム」で天体観測を楽しむなど、1泊2日のコース。加古川線100周年記念のキーホルダーなども、贈呈されます。
ふるさと納税の寄付額は100万円。プランは2回実施され、それぞれ先着1組(2人まで)が参加できます。