【2025年4月11日】北海道の鈴木知事は、道南いさりび鉄道の赤字補てんについて、道の負担割合を引き下げる方向で検討していることを明らかにしました。
道南いさりび鉄道に対する自治体負担は現状、北海道が8割、沿線自治体(函館市・北斗市・木古内町)が2割です。これについて、2025年1月30日に開かれた道南いさりび鉄道沿線地域協議会で、北海道が負担割合の見直しについて言及しています。
鈴木知事は、具体的な内容は決まっていないとして「関係者の理解を得ながら進めることが重要。慎重かつ丁寧な対応に努めたい」と述べています。
【解説】負担割合の変更は約束されていた?北海道が引き下げを提言した理由
道南いさりび鉄道に対する自治体負担の割合をめぐっては、2023年9月11日の道南いさりび鉄道沿線地域協議会で議題になっています。道南いさりび鉄道の赤字額は、年間で約2億円。利用者の減少や鉄道施設の維持費高騰などの理由で赤字は増加傾向にあり、自治体負担も増えています。
こうした状況に協議会では、道南いさりび鉄道の存廃を含めた「あり方」について言及。事業形態の見直しや赤字補助の負担割合の見直しも検討されます。
その後、道南いさりび鉄道と沿線自治体は「第2次経営計画」を策定。2030年度までは、沿線自治体の支援を受けながら存続することが決まりました。しかし、負担割合については北海道が見直しを求める提言をしただけで、棚上げされたのです。
負担割合の見直しの協議を避けることなく正面から協議をしていくことが、計画の信用度を確かなものにするのではないかと考えている。
出典:第7回道南いさりび鉄道沿線地域協議会 議事録
(中略)
今後、協議を進める上で何を土台とするかは、後日、議論のベースになるものを示し、協議会の場で検討させていただきたい。
さて、現状の「北海道が8割、沿線自治体が2割」という負担割合は、2012年2月14日の北海道道南地域並行在来線対策協議会で決まったものです。この割合の理由について、「他県の事例を参考にしつつ、道の財政状況も考慮」して決めたと、協議会の資料に記されています。
しかし、この資料にはない「約束」が、北海道と沿線自治体とのあいだで取り交わされたそうです。2025年4月11日の定例記者会見で、鈴木知事は以下の発言をしています。
平成24年2月に、道と沿線の3市町で構成する協議会があるのですけれども、こちらで道と沿線自治体の負担割合については、8対2としましょうということで確認しました。その際に、開業後、一定期間が経過した後に、負担割合などの再検討をしていきましょうということも、実は併せて確認させていただいているところでして、こういった平成24年の経過がまずありました。
出典:北海道「知事定例記者会見(令和7年4月11日)」
負担割合の見直しは「確定事項であった」というのが、北海道の見解です。そのうえで、沿線自治体との協議に向けて、他県の事例などを参考に議論のたたき台を整理していると、鈴木知事は伝えています。
では、負担割合はどうなるのでしょうか。鈴木知事は「その割合について、この場で申し上げるような状況にはない」と、同日の定例記者会見で述べています。
北海道新聞(2025年4月9日)によると、北海道の負担を5割に引き下げ、沿線自治体と同じにすると伝えています。仮に、道南いさりび鉄道の赤字額を年間2億円とした場合、北海道の負担額は従来の1億6,000万円から1億円に減額。一方で沿線自治体の負担額は、4,000万円から1億円に増えます。財政難の沿線自治体からの反発は、避けられないでしょう。
もっとも協議はこれからですから、どうなるかはわかりません。ただ、負担割合は「便益の大きさ」で決まるのが通例です。旅客列車より貨物列車の運行が多い、道南いさりび鉄道の線区。その便益として北海道の割合がどれくらいになるのかも、議論のポイントです。
※道南いさりび鉄道をめぐる北海道と沿線自治体との協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
その他の鉄道協議会ニュース
JR加古川線の存廃協議をかけた実証実験が始まる
【2025年4月13日】加古川線の西脇市~谷川で、臨時列車の増便などの実証実験が始まりました。実証実験では、臨時列車を1日2往復運行するほか、谷川駅に特急列車を臨時停車させます。実験初日の西脇市駅では、JR西日本の社員や沿線住民が乗客を出迎え。記念品を手渡したり、横断幕を掲げて列車を見送ったりしたそうです。
実験期間は、大阪・関西万博が開催中の2025年4月13日から同年10月13日まで。JR西日本と沿線自治体は、半年間の利用促進効果を検証し、一定の効果が現れなければ同線区の「あり方」の協議を始めることに合意しています。
※加古川線(西脇市~谷川)の存廃協議に沿線自治体が同意した経緯について、以下の記事で詳しく解説しています。
えちぜん鉄道「安全対策への支援」を福井県に要請
【2025年4月16日】えちぜん鉄道と沿線自治体は福井県庁を訪問し、杉本知事に安全対策などへの支援を要請しました。
えちぜん鉄道では2025年3月2日に、落石への衝突による脱線事故が発生。同年3月13日に全線再開しますが、落石のリスクは残っており長期的な対策が必要としています。この事故について、えちぜん鉄道は落石防止などの安全対策に必要な費用にくわえ、破損した車両の修繕費についても支援を要請しました。
杉本知事は、費用の工面を含めて安全確保に向けた打開策を検討する考えを伝えています。