【NEWS】立山線と不二越・上滝線は存続か?富山地鉄本線は一部廃止も検討へ

立山線と不二越・上滝線の岩峅寺駅 協議会ニュース

【2025年12月1日】富山地方鉄道の不採算線区をめぐる分科会が、2025年11月22日から12月1日にかけて開かれ、各線区の「あり方」について議論されました。

11月22日に開かれた立山線の分科会では、沿線自治体が「みなし上下分離」を軸に公的支援の検討を表明。届出だけで運賃が決められる「協議運賃」などの増収策も示し、富山地方鉄道との協議継続に合意しています。

11月29日には、本線の分科会が開催。あいの風とやま鉄道と並行する滑川~新魚津の扱いをめぐり議論されました。この区間の存続または廃止については、2026年に持ち越されます。

みなし上下分離での存続方針が示された不二越・上滝線の分科会は、12月1日に開催。富山市は、通常のみなし上下分離を改良した「富山型官民連携方式」を提言し、2025年度中に再構築実施計画の素案をまとめる模様です。

いずれの線区も2026年11月末の廃止を回避できたものの、富山地方鉄道は存廃判断の先延ばしについて「繰り返しはない」と伝えており、2026年度中には各線区の将来が決まりそうです。

【解説】鉄軌道王国らしい先進的な支援策で鉄道存続をめざす

コロナを発端に経営危機に陥った富山地方鉄道に対する、沿線自治体の考えや支援策が具体的になってきました。ざっくりまとめると、立山線(岩峅寺~立山)と不二越・上滝線(月岡~岩峅寺)は、みなし上下分離をベースとした支援で、存続を前提に協議を進めています。これに対して本線は滑川~新魚津の廃止も検討しており、予断を許さない状況です。

各線区の分科会では、沿線自治体が富山地方鉄道への新たな支援策も提言しています。富山港線や城端線、氷見線などの再構築をしてきた鉄軌道王国・富山らしい先進的な取り組みもみられ、赤字ローカル線の存廃問題を抱える全国の自治体にも参考になりそうです。

ここでは、立山線で検討されている「協議運賃」と、不二越・上滝線で検討している「富山型官民連携方式」について詳しくみていきます。

協議運賃の導入で観光利用の増収をめざす立山線

立山線では「協議運賃」の導入を模索しています。協議運賃とは、沿線住民の生活に必要な線区の運賃を、自治体などの関係者と協議して決められる制度です。

鉄道の運賃改定は通常、事業者が国土交通省に申請して「認可」を受けるように、法律で定められています。これに対して協議運賃は、適正な原価・利潤を超えない範囲であれば、地域で協議して決めた運賃を国土交通省に「届出」するだけで設定できます。これは、2023年10月1日に改正された鉄道事業法第16条第4項(旅客の運賃及び料金)にもとづく特例です。

具体的には、JR四国の牟岐線と徳島バスとの共同経営における、共通運賃や通し運賃を設定した事例などが挙げられます。この場合、地域公共交通を守るために徳島県を中心に関係者と協議し、徳島バスの運賃をJR四国の運賃に合わせました。なお、運賃は徳島バスのほうが高いため、差額はJR四国が支払う取り決めです。

富山地方鉄道の立山線で検討している協議運賃は、牟岐線のケースとは少し異なります。その内容は、立山線の岩峅寺~立山で「沿線住民向けに安い運賃制度を導入する」という計画です。

立山線は観光客の利用も多いです。その観光客の運賃を少し高く設定することで増収を図るとともに、地域住民には安い運賃で利用者を増やそうというのが、協議運賃を設置する狙いです。なお、差額は自治体(立山町)が補助するとしています。

特定利用者に対する運賃補助のしくみは、他の赤字ローカル線の沿線自治体でもおこなっています。ただ、「利用は学生のみ」などの制限を設けたり、「利用するたびに自治体への申請が必要」といった手間が生じたりするため、利用促進につながらないケースも散見されます。

協議運賃は、鉄道利用のハードルを下げられる点でもメリットがあり、立山線の利用者増加につながることが期待されます。

不二越・上滝線では富山版みなし上下分離を模索

不二越・上滝線では、通常のみなし上下分離を改良した「富山型官民連携方式」が検討されています。この方式は、みなし上下分離のデメリットを改善し、官民一体で鉄道を守る点が特徴です。

通常のみなし上下分離では、線路や車両などの鉄道施設にかかる維持管理費を、自治体が負担します。鉄道施設は事業者が保有したままですから、自治体からみれば「運営に関わりにくい」こともありますし、仮に事業者が黒字になっても「成果に対する還元が受けられない」といったデメリットもあります。また、「支援してもらうのが当たり前」といった事業者のコスト意識が薄れることも危惧されます。

こうしたデメリットを改善するため、富山型官民連携方式では、自治体が運営に関与しやすくするための協定を富山地方鉄道と締結。「増便したい」「施設を更新したい」「新駅を設置したい」といった要請を自治体がしやすくなることで、一定水準のサービスを確保でき、ひいては利用促進につながるとしています。

また、利用促進などの各種施策で増収や経費削減を図れた場合は、その成果を官民で分け合うインセンティブを導入する点もポイントです。これにより「支援してもらうのが当たり前」といった事業者のコスト意識の薄れを防げるとしています。

事業者任せや自治体任せではなく、また「単なる赤字補てん」というネガティブな支援とも一線を画した官民連携の取り組みは、鉄軌道王国・富山だからこそ着眼できる支援形態でしょう。具体的な内容は、今後の協議で決まります。

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参考URL

富山地方鉄道立山線の必要性について(富山県)
https://www.pref.toyama.jp/documents/51177/04_siryo01.pdf

第9回交通政策審議会 鉄道運賃・料金制度のあり方に関する小委員会 国土交通省説明資料
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001586659.pdf

事業構造の変更の主な方式の比較(富山県)
https://www.pref.toyama.jp/documents/51209/06_shiryo02-2.pdf

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