【2025年9月27日】災害などで長期運休になったローカル線で、復旧が続いています。
2023年夏の豪雨災害で一部区間が不通になったJR山陰本線では、2025年9月27日に人丸~滝部の運転を再開しました。これにより山陰本線は、2年3カ月ぶりに全線復旧。「○○のはなし」や「TWILIGHT EXPRESS瑞風(山陰コース)」などの列車も運転を再開しています。
2025年8月の豪雨災害で被災した肥薩おれんじ鉄道も、最後まで不通となっていた八代~日奈久温泉が復旧し、9月29日の始発から運転を再開しています。
また、2025年9月の豪雨災害で池田~白糠が不通だったJR根室本線も、10月5日の始発より運転再開。帯広~釧路で代行バスを運行していた特急「おおぞら」は、この日から札幌~釧路で運転を再開します。
【解説】長期不通のローカル鉄道の現状(2025年10月4日現在)
上記のほか、豪雨災害などの影響で長期不通になった路線でも復旧が進んでいます。
2025年8月の豪雨災害で、一部区間が不通になったJR日豊本線は、9月20日までに全線で運転を再開。また、豪雨の影響とみられる法面崩落で能登中島~穴水が不通となったのと鉄道も、8月25日に全線で運転を再開しています。
2025年10月4日現在で、長期運休しているローカル線は全国に10路線あります。各路線の現状をまとめました。
JR津軽線
- 不通区間:蟹田~三厩
- 原因:豪雨
- 不通になった時期:2022年8月
JR津軽線の蟹田~三厩は、廃止が決定しています。現在は、代行バスと乗合タクシー「わんタク」を運行。これらを活用した自動車交通への転換を沿線自治体が受け入れ、蟹田~三厩の廃止が決まりました。
JR東日本は、新たな地域公共交通を担うNPO法人の設立費用や18年分の運行経費として、33億6,600万円を拠出。2027年4月の運行開始をめざしています。
※津軽線(蟹田~三厩)が廃止に至った経緯は、以下の記事で詳しく解説しています。
秋田内陸縦貫鉄道(秋田内陸線)
- 不通区間:上桧木内~角館
- 原因:豪雨
- 不通になった時期:2025年8月
2025年8月の豪雨災害で、一部区間が不通に。その後復旧が進められ、9月中旬の全線再開をめざしていましたが、「復旧作業が想定よりも工期を要する」ことが判明。上桧木内~角館の復旧は10月中旬になる予定です。
なお、不通区間では代行バスを運行しています。
JR陸羽東線
- 不通区間:鳴子温泉~新庄
- 原因:豪雨
- 不通になった時期:2024年7月
2024年7月の豪雨災害により、鳴子温泉~新庄が長期不通に。土砂流入や盛土崩壊など19カ所で被害が確認されています。被災箇所のなかには森林管理者などの地権者との協議も必要であったことから、工事着手に時間を要した模様です。
JR東日本は、2025年9月より本格的な復旧工事を開始。復旧時期は未定です。
【参考】JR東日本「陸羽東線 鳴子温泉~新庄間 復旧工事の着手について」
JR陸羽西線
- 不通区間:新庄~酒田
- 原因:道路トンネル工事にともなう運休
- 不通になった時期:2022年5月
国道47号「高屋トンネル(仮)」の工事の影響により、全線で運休しているJR陸羽西線ですが、運転再開の見通しが立ったとしてJR東日本は今後の見通しを発表しました。運転再開日は、2026年1月16日の予定です。
なお再開後のダイヤでは、利用者が極めて少ない羽前前波駅と高屋駅は、全列車が通過します。今後、住民説明会などを開き2駅の廃止を説明する模様です。
【参考】JR東日本「国土交通省による高屋道路「(仮)高屋トンネル」工事の進捗状況を踏まえた陸羽西線 運転再開およびバス代行輸送終了時期の見通しについて」
JR米坂線
- 不通区間:今泉~坂町
- 原因:豪雨
- 不通になった時期:2022年8月
JR米坂線復旧検討会議で、JR東日本と沿線自治体との協議が進んでいます。
利用者の少なさと約86億円とされる復旧費用から、JR東日本は「自社単独での復旧・運行は困難」と表明。鉄道で復旧する場合は、上下分離方式への移行や第三セクターへの移管を求めています。廃止・バス転換も提示していますが、沿線自治体は「バス転換の選択はない」と表明しており、協議は暗礁に乗り上げている模様です。
※米坂線復旧検討会議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
いすみ鉄道
- 不通区間:大原~上総中野
- 原因:脱線事故
- 不通になった時期:2024年10月
2024年10月に発生した脱線事故の影響により、全線で運転を見合わせています。事故の原因は「枕木の腐食やひび割れにより、レール幅が基準値より広がったため」とされ、同様の箇所が事故現場以外でも多数確認されています。
いすみ鉄道では枕木交換などの復旧作業を進めており、利用者の多い大原~大多喜については、2027年秋頃の運転再開をめざすとしています。残る大多喜~上総中野は「復旧等の費用や期間に係る調査を進める」としており、運転再開の時期は未定です。
黒部峡谷鉄道
- 不通区間:猫又~欅平
- 原因:地震
- 不通になった時期:2024年1月
2024年1月に発生した能登半島地震により、鐘釣橋付近で落石が発生するなどの被害を受け、一部区間が不通になっています。
黒部峡谷鉄道は2025年9月30日の記者会見で、「復旧工事は順調に進んでいる」と報告。早ければ、2026年7月ごろに運転再開できる見通しを示しています。
大井川鉄道
- 不通区間:川根温泉笹間渡~千頭
- 原因:台風
- 不通になった時期:2022年9月
2022年9月の台風で甚大な被害を受けた大井川鉄道。復旧費用は約21億円と見積もられました。この費用をめぐり、沿線自治体と協議。大井川鉄道の負担分を自治体が補助または貸付することで合意し、復旧が決定します。
大井川鉄道は、復旧に向けた調査や工事を開始。運転再開時期は2029年の予定です。
※大井川鉄道の復旧協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
JR美祢線
- 不通区間:厚狭~長門市
- 原因:豪雨
- 不通になった時期:2023年7月
美祢線は、BRT転換が確定しています。2025年7月16日に開かれたJR美祢線利用促進協議会で、沿線自治体はBRTでの復旧を容認。その後、山口県との協議でBRTによる地域公共交通の再構築を確認し、法定協議会の設置が決まりました。
今後は、ルートや費用負担などの話しを進める模様です。なお、BRTの運転開始は3~4年後とされていますが、正式な時期は未定です。
※美祢線の復旧協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
JR肥薩線
- 不通区間:八代~隼人
- 原因:豪雨
- 不通になった時期:2020年7月および2025年8月
2020年7月の豪雨で、八代~吉松が長期不通に。このうち八代~人吉は、熊本県とJR九州の協議で復旧に合意し、2033年ごろの運転再開をめざしています。人吉~吉松は、担当者レベルの協議が始まっていますが、本格的な協議はこれからです。
肥薩線は2025年8月の豪雨で、吉松~隼人も長期不通になりました。JR九州は代行バスを運行していますが、鉄道の復旧時期は未定です。