週刊!鉄道協議会ニュース【2024年11月24日~11月30日】

大鰐線の列車 協議会ニュース

今週の「週刊!鉄道協議会ニュース」は、弘南鉄道が大鰐線の運行休止を沿線自治体に伝えた話や、JR東日本が久留里線の一部区間の廃止を明言した話題など、さまざまなニュースをお伝えします。

弘南鉄道が大鰐線の「休止」を申し入れ – 沿線自治体は合意

【2024年11月27日】弘南鉄道は、大鰐線の運行を2027年度末で休止にする考えを明らかにしました。これは、弘南鉄道への支援を協議する弘前圏域8市町村長の会議で、同社が申し入れたものです。沿線自治体は、おおむね合意しています。

弘南鉄道によると、沿線自治体が求める中長期計画の見直しについて、収益改善は困難と判断。「大鰐線の運行継続は難しい」として、休止の結論に至ったそうです。休止時期について弘南鉄道は、「これから受験を決める高校生や中学生のことを考え、3年ぐらいは運行を継続したい」と表明。具体的な時期は、沿線自治体と今後の協議で決めるとしています。

弘南鉄道の報告を受けて、弘前市の桜田市長は「地域住民が不安にならないよう、さまざまな方策を検討していく」と会議後の記者会見で述べています。また、大鰐町の山田町長は「(弘南鉄道の)苦渋の決断だと受け入れた。今後、地域交通を確保するために対策を考えていく」と語っています。

【解説】突然の運行休止宣言「これ以上負担をかけるのは申し訳ない」

弘南鉄道が示した大鰐線の運行休止の報告は、沿線自治体にとって「寝耳に水」でした。とくに弘前市と大鰐町には、かなりの衝撃だったようです。会議後の記者会見で、弘前市の桜田市長は「大鰐線を維持するという強い思いで、これまで支援してきた。できなかった場合のことは想定していない」とコメント。大鰐町の山田町長も「大変驚いた。地域経済への影響が懸念されるが、苦渋の決断だと受け入れた」と言葉を詰まらせながら話しています。

両市町が驚いたのは、弘南鉄道に中長期計画の見直しを求めていた途中だったからです。

大鰐線は利用者の減少が続いており、弘南鉄道の経営は年々悪化。輸送密度は、コロナ禍前(2019年度)の段階で、500人/日を割り込んでいました。沿線自治体はすでに支援を続けていましたが、利用者の減少に歯止めがかからない状況から、2021年に条件付きの「支援の基本方針」を打ち出します。

その条件とは、「2019年度比で2,000万円増収すること」です。この条件を、もし2023年度末の段階で達成しなければ、「大鰐線に対する2026年度以降の支援を打ち切る」という基本方針を沿線自治体が打ち出します。これを受けて弘南鉄道は、2021年度から10年間の中長期計画を策定。沿線自治体と協力して、さまざまな施策を実施してきました。

しかし、コロナの影響もあり利用者数はさらに減少。回復傾向にあった2023年度には、脱線事故を起こして長期運休に。物価高騰や人員不足も影響し、経営状況は悪化の一途をたどります。そして、2023年度の決算報告。2019年度比で2,000万円の増収という目標に対し、実際には約3,000万円の減少で、達成できませんでした。

この状況に、弘前市と大鰐町は「計画策定時とは状況が異なる」として、弘南鉄道に中長期計画の見直しを求めます。一方、黒石市や平川市など他の沿線自治体は「このまま支援を続けていいのか」「基本方針に沿って支援を決めるべきだ」と、支援の継続に疑問を投げかけます。それでも存続を願う両市町は「中長期計画の見直し案を確認したうえで、今後の支援について協議したい」と主張。弘南鉄道に対して、計画見直しの猶予を与えたのです。

中長期計画の見直し案は、2024年9月に提出されます。しかし、弘前市と大鰐町は「経営改善と利用促進の内容が具体的ではない」として、再度の見直しを求めます。両市町は、あくまでも大鰐線を存続させるために再見直しを求めたわけです。その最中であった2024年11月27日、弘南鉄道は大鰐線の運行休止を発表します。

弘南鉄道の成田社長は「沿線自治体から多くの支援を得ながら継続してきたが、これ以上負担をかけるのは申し訳なく、運行休止を決断した。利用者に対しても大変申し訳ない」と、会議後の記者会見でコメントしています。

なお、現段階で弘南鉄道は大鰐線を「休止」としています。しかし、休止期間中にも路線維持の費用がかかるため、今後の沿線自治体との協議で「廃止」になるかもしれません。運行される期間も含め、大鰐線の未来は2025年3月までに最終判断される予定です。

※大鰐線をめぐる弘南鉄道と沿線自治体との協議や支援の詳細は、以下の記事で解説しています。

その他の鉄道協議会ニュース

久留里線(久留里~上総亀山)の廃止方針を初めて提示 – JR東日本

【2024年11月27日】JR東日本は、久留里線の久留里~上総亀山について「新たな交通体系への転換をできるだけ早く進めたい」と表明しました。同区間における事実上の「廃止宣言」をしたのは、今回が初めてです。

JR東日本と沿線自治体は、2023年5月から「JR久留里線(久留里・上総亀山間)沿線地域交通検討会議」で、地域公共交通の将来について協議してきました。検討会議は、2024年10月に報告書を提出。自動車交通を中心とした新たな交通体系の構築が適切として、JR東日本に交通体系案の策定を求めました。

これを受けてJR東日本は、報告書で示されたバスとデマンド交通(タクシー)を組み合わせた交通体系を検討。バスに関しては、久留里駅から君津青葉高校や病院、商業施設などを結ぶルートを想定しているようです。なお、沿線自治体の君津市には11月25日に廃止の意向を伝えており、君津市は「鉄道の代替交通として、使いづらいものにならないよう議論を進めていく」とコメントしています。

久留里~上総亀山の廃止時期などは、これから君津市が設置する「地域公共交通会議(法定協議会)」で、最終的に判断されます。

※久留里線(久留里~上総亀山)の存廃をめぐる沿線自治体とJR東日本との協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。

JR九州が日南線の「あり方」協議を申し入れへ

【2024年11月28日】JR九州の古宮社長は定例記者会見で、日南線の一部線区の「あり方」について、沿線自治体に協議を申し入れる考えを示しました。対象線区は、油津~志布志の42.9kmです。

日南線の選定理由について古宮社長は、「輸送密度は179人/日(2023年度)で、JR発足時から73%も減少していること」「志布志から先は鉄道ネットワークにつながっていないこと」「災害で長期不通になる日が多いこと」などを挙げています。

そのうえで、「存廃の前提を置かず、地域や利用者にとって最適な公共交通をめざしたい」と、沿線自治体に協議への理解を求めました。なお、協議は法定協議会や再構築協議会ではなく「それに進む前のステップ」として、期限は設けないとのことです。

JR九州の方針を受けて、宮崎県の河野知事は「通勤通学などの足を確保するために、鉄道を残すか、別の交通手段にするか、議論を深めていきたい」と地元メディアの会見で語っています。

※日南線では、沿線自治体とJR九州が組織する「線区利用に関する検討会」で、利用促進などの話を進めています。この検討会の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。

富山地方鉄道への支援協議に新田知事が初参加

【2024年11月28日】富山地方鉄道への支援策を話し合う沿線首長会議に、富山県の新田知事が初めて参加しました。この会議は、富山市をはじめ沿線自治体が2024年9月に設置。広域のまちづくりや観光などに影響があるとして、富山県の参画を求めていました。なお、沿線自治体は「みなし上下分離」による富山地方鉄道への支援を検討しています。

この日の会議で新田知事は、「乗客を増やすことにつきる。次のステップとして、あいの風とやま鉄道と並行する区間の話し合いも必要」と発言。富山市の藤井市長は「沿線住民に利用していただけるよう、まちづくりの観点も含めて方策を共有したい」と述べたようです。

会議は今後も続けられ、富山地方鉄道の意見も踏まえたうえで支援策を決めるとしています。

宇都宮ライトレールの東武線乗り入れ構想 – 福田知事が三者協議の意向

【2024年11月27日】栃木県の福田知事は、宇都宮ライトレールの東武宇都宮線乗り入れ構想について、県と宇都宮市、東武鉄道の三者で2025年度から協議を始める意向を示しました。

宇都宮ライトレールは、2023年8月の開業から約1年で500万人以上が利用。沿線地域に、さまざまな経済波及効果を与えています。この効果を県内全域に波及させるうえで、福田知事や宇都宮市は東武宇都宮線への乗り入れを検討していました。ただ、車体サイズや電圧が異なるなど乗り入れには課題も多く、解決策を検討するには東武鉄道との話し合いが必要です。そこで福田知事は、東武鉄道に協議を打診。早ければ2025年春にも始まる予定です。

福田知事の発言を受け、東武鉄道は読売新聞の取材に対して「解決すべき課題は多いが、正式な要請があれば協議を進め、宇都宮エリアや東武宇都宮線沿線の価値向上に協力したい」とコメントしています。

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