【JR西日本】美祢線の廃止を防いだ沿線自治体の取り組み

美祢線の駅 JR

美祢線は、山口県の厚狭と長門市駅を結ぶJR西日本のローカル線です。かつては急行列車や貨物列車も運行していましたが、利用の減少にともない廃止に。現在は、旅客普通列車のみ1日9往復運行しています。

2010年、美祢線は豪雨災害により大きな被害を受けました。一時は廃止の声も聞かれましたが、沿線自治体は美祢線の復旧と利用促進をめざして協議会を設置。今日に至るまで、さまざまな取り組みを展開し、美祢線の存続に寄与しています。

※2023年の災害復旧に関する、JR西日本と沿線自治体との協議の流れは、以下のページで解説しています。

JR美祢線の線区データ

協議対象の区間JR美祢線 厚狭~長門市(46.0km)
輸送密度(1987年→2019年)1,741→478
増減率-73%
赤字額(2019年)4億4,000万円
営業係数630
※輸送密度および増減率は、JRが発足した1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額・営業係数については、2017年から2019年までの平均値を使用しています。

協議会参加団体

美祢市、山陽小野田市、長門市、山口県、JR西日本

美祢線と沿線自治体

美祢線をめぐる協議会設置までの経緯

2010年7月、美祢線の沿線地域に記録的な豪雨が襲います。この豪雨で、増水した厚狭川にかかる鉄道橋梁が流失したほか路盤流出も各所でみられ、美祢線は全線で長期不通になりました。

被害総額は約13億円。山口県は、JR西日本に対して早期復旧を要望しますが、復旧には河川改修も必要です。そこで、河川改修の事業費として国と山口県が約6億8,000万円を負担。それ以外の工事費はJR西日本が出すことで合意し、美祢線の復旧に向けて動き始めます。

一方、美祢線は利用者の減少に歯止めがかからず、復旧したからといって安泰とはいえません。そこで沿線自治体は、災害から2カ月後の2010年9月に「JR美祢線利用促進協議会」を設立。美祢線の利用促進策の検討を始めます。なお、翌2011年5月の第2回協議会からはJR西日本も参加。復旧後の具体的な取り組みについて、協議がスタートしました。

災害から1年以上を経た2011年9月、美祢線は全線で運転を再開します。これに先立ち、第3回の協議会(2011年9月)では「年間10万人の利用需要の創出」を目標に、沿線自治体が主体の利用促進策が確認されます。なお、協議会は復旧後も年1回のペースで開催しており、計画を見直しながら各種取り組みを進めています。

デマンド交通の整備で美祢線の利用者増をめざす

沿線自治体では、地域公共交通の利用促進と公共交通の空白地解消を目的に、デマンド交通の整備を進めています。

美祢市では、事前予約型の乗合タクシー「ジオタク」を2009年より運行開始。市内8区域で、美祢線や路線バスに接続するようルートやダイヤの調整を図っています。このほか、コミュニティバス「あんもないと号」の導入、観光地の秋吉台・秋芳洞ではタクシーを使った実証運行なども実施。さらに、公共交通の利用方法などを記載した鉄道・バスの時刻表を市内全戸に配布し、公共交通の周知活動にも努めています。

美祢市の公共交通マップ
▲美祢市の公共交通マップ。乗合タクシー「ジオタク」が、鉄道・バスの主要拠点とつなぎ、公共交通の利用促進を図っている。
出典:国土交通省「令和3年度 地域公共交通確保維持改善事業 事業評価 美祢市地域公共交通協議会 生活交通確保維持改善計画(地域内フィーダー系統)の概要」

こうした取り組みもあってか、美祢線の利用者数は減少に歯止めがかかったようです。とはいえ、2019年には輸送密度が500人/日を下回り、利用促進だけで存続を図ることの難しさを感じさせます。

美祢線の主な取り組み

デマンド交通のほかにも、沿線自治体はさまざまな利用促進の取り組みを進めています。その一部を紹介しましょう。

  • 運賃助成制度(10人以上の団体助成、回数乗車券の助成など)
  • ラッピング列車の運行
  • イベント列車や観光列車の運行(やきとり列車、長州号など)
  • 絵画コンテスト・フォトコンテストの実施
  • 利用促進ポスターの制作
  • 沿線公共施設利用料金の減免(美祢線利用者には施設利用料の割引など)

…など

運賃助成制度には、「10名以上の団体に対して半額を助成(上限は1人片道400円)」「3カ月間に9回以上利用する場合は回数券購入額の20%を助成」「通勤定期券は15~20%助成」など、複数の制度を用意しています。

また、沿線には秋吉台をはじめ観光地が多いことから、美祢線とフィーダー交通の接続改善も進めています。現状では、美祢駅などと観光地を「線でつなぐバス路線」が大半のため、利便性や周遊性に課題があるようです。これを、他の駅ともつなぎ「面で移動できる交通網」を整備することによって、周遊性をもたせ、美祢線の利用促進につなげていきたいと検討中です。

2023年5月、協議会は3年間の事業計画を承認しました。この計画では、ラッピング車両の運行や宿泊客への旅行支援、スタンプラリーなどの取り組みが予定されています。計画最終年にあたる2025年は、美祢線が全線開通してから100周年です。協議会は、この年に「輸送密度500人/日の回復」をめざしており、さらなる取り組みが期待されるところです。

災害で再び不通に…美祢線は復旧できるか?

2023年7月、沿線地域を襲った豪雨により、美祢線は再び大きな被害を受けました。被害状況の詳細はJR西日本が調査中のため、もう少し待たないとわかりませんが、厚狭川にかかる橋梁の流出や複数箇所の路盤流出が確認されていることから、2010年と同規模の被害が出ているものと推測されます。

被害状況の調査結果を受けて、JR西日本が単独で復旧するのか、あるいは前回と同じく沿線自治体などに復旧費用の一部負担を求めるのか判断されますが、いずれにしても長期間の不通は避けられない状況です。

気になるのが、復旧に関してJR西日本が「美祢線のあり方」を求めてくるかという点です。協議会による利用促進策は一定の効果が現れているものの、利用者数は緩やかに減少を続けています。復旧費用が億単位になれば、JR西日本からさらなる支援が求められることも考えられます。

とくに、今回も厚狭川の氾濫による橋脚の流出が認められていることから、河川改修や管理のあり方について問われる可能性はあるでしょう。JR西日本の被害調査の結果と今後の見解に、注目が集まります。

※2023年の災害復旧に関する、JR西日本と沿線自治体との協議の流れは、以下のページで解説しています。

※災害後に復旧または廃止になった路線の事例一覧は、以下のページで案内します。

災害後の復旧・廃止をめぐる赤字ローカル線の協議会リスト
災害により長期間不通となっている赤字ローカル線の復旧・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【中国】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
中国地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

ローカル線に関する課題認識と情報開示について(JR西日本)
https://www.westjr.co.jp/press/article/items/220411_02_local.pdf

協議会の活動(JR美祢線利用促進協議会)
https://www.jrminesen.com/katsudou.html

令和3年度 地域公共交通確保維持改善事業 事業評価 美祢市地域公共交通協議会 生活交通確保維持改善計画(地域内フィーダー系統)の概要(国土交通省)
https://wwwtb.mlit.go.jp/chugoku/content/000259839.pdf

美祢市地域公共交通計画
https://www2.city.mine.lg.jp/material/files/group/7/2024062103.pdf

JR美祢線利用促進協議会の総会が開催(長門市)
https://www.city.nagato.yamaguchi.jp/wadairoot/wadai/20220519jrminesenriyousokushin.html

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