【関東鉄道】TXに奪われた客を戻せ!常総線&竜ヶ崎線の取り組み

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関東鉄道の駅 私鉄
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関東鉄道は、茨城県南部で常総線と竜ヶ崎線の2路線を運営する私鉄です。両線とも東京のベッドタウンとして地域とともに発展してきましたが、近年の利用者数は減少傾向にあります。

沿線自治体は常総線と竜ヶ崎線の存続をめざして、さまざまな取り組みを進めています。

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関東鉄道(常総線・竜ヶ崎線)の線区データ

協議対象の区間常総線 取手~下館(51.1km)
竜ヶ崎線 佐貫~竜ヶ崎(4.5km)
輸送密度(1987年→2019年)取手~下館:4,607→3,883
佐貫~竜ヶ崎:3,376→2,179
増減率取手~下館:-16%
佐貫~竜ヶ崎:-35%
赤字額(2019年)193万円
※輸送密度および増減率は1987年と、コロナ禍前の2019年を比較しています。
※赤字額は、コロナ禍前の2019年のデータを使用しています。

協議会参加団体

常総市、龍ケ崎市、下妻市、取手市、守谷市、坂東市、筑西市、つくばみらい市、八千代町、茨城県、商工団体、関東鉄道、沿線住民など

関東鉄道をめぐる協議会が設置されるまでの経緯

関東鉄道の沿線には、1970年代から80年代にかけてニュータウンが続々と形成され、東京方面への通勤・通学路線として大きく発展していきました。

ただ、バブルがはじけ都心回帰が始まると利用者数は減少に。常総線では、年間約1,400万人が利用した1995年をピークに減り始め、2009年には1,000万人を割り込みます。一方で竜ヶ崎線は、モータリゼーションの進展にともない1970年代から右肩下がりに。1975年に年間約238万人いた利用者数は、近年では100万人を割り込んでいます。

さらに常総線では、減少に追い打ちをかける出来事が2005年に起こります。つくばエクスプレス(TX)の開業です。取手でJR常磐線に乗り換えていた通勤通学客が、つくばエクスプレスの最寄り駅まで車で行き都心へ向かうようになったため、常総線の利用者が激減したのです。

■常総線のピーク時の輸送人員(西取手→取手 単位:人)

▲常総線の最混雑区間(西取手→取手)における1時間の輸送人員。つくばエクスプレスが開業した2005年に取手まで利用する通勤通学客が大きく減少した。
参考:運輸政策研究機構「都市交通年報」の資料をもとに筆者作成

関東鉄道では、快速列車の新設など増便による利便性向上を図る一方で、全列車のワンマン化や駅の無人化といった合理化で収支改善に努めます。しかし、沿線地域の高齢化にともなう通勤定期客の減少や、少子化にくわえスクールバスの拡充による通学定期客の減少など、利用者減少に歯止めがかかりません。

老朽化した鉄道施設の更新にも迫られるなか、両線の沿線自治体は2007年に関東鉄道への支援を目的とした協議会を設置します。

関東鉄道(常総線・竜ヶ崎線)のこれまでの取り組み

協議会では、関東鉄道が都心方面に向かう通勤通学客の多い路線であることから、交通系ICカードの導入を検討。2008年から全線で導入しています。また、老朽化した鉄道施設の更新として、鉄道軌道安全輸送設備等整備事業費補助制度などの国の補助金を活用しながら支援もおこなっています。

このほか、沿線自治体と協働で進めている利用促進策は、以下の通りです。

  • 新駅の設置(ゆめみ野駅)
  • パークアンドライド
  • イベントの実施(駅からウォーキング大会、交通すごろくなど)
  • イベント列車の運行(ビール列車、サイクルトレインなど)
  • 沿線ガイドマップ発行
  • 企画きっぷ・グッズの販売

…など

常総線では2010年に「ゆめみ野駅」を開業。利用者は年々増加傾向にあり、2022年の乗降客数は2,000人を超えたようです。また、石下~下館にはパークアンドライドを設置し、沿線住民の利用促進につながっています。

観光誘客を目的としたイベントの実施や、イベント列車の運行なども、関東鉄道は注力しています。「駅からウォーキング大会」は、2003年から実施。沿線自治体だけでなく、茨城県や商工会なども協力しています。年4回おこなっており、毎回150~200人が参加しているようです。

「ビール列車」は2011年から運行。沿線にはキリンとアサヒのビール工場があり、そのビールを飲みながら流れる車窓を楽しめるとして人気があります。このほかイベント列車としては、「サイクルトレイン」も常総線の水海道~大田郷間と竜ヶ崎線の全線で実施しています。

利用者減少に歯止めはかかるが赤字は続く関東鉄道

利用促進に関するさまざま取り組みもあり、関東鉄道の利用者数は2012年から増加に転じています。常総線は年間1,000万人台に回復。コロナ禍前までは増加傾向が続きました。

一方で、竜ヶ崎線も2012年から増加に転じましたが、2018年より再び減少に転じています。龍ケ崎市では、2017年に法律にもとづいた地域公共交通網形成計画を策定し、竜ヶ崎線の設備更新などに対する補助を実施しています。ただ、利用促進策については、さらなる検討を進めたいところです。

■年間乗車人員の推移(単位:万人)

2011201220132014201520162017201820192020
常総線9169499629919899921,0011,0201,035770
竜ヶ崎線84868687888588848157
▲常総線・竜ヶ崎線の年間利用者数の推移。2011年に過去最低を記録して以降、増加に転じている。
参考:国土交通省「鉄道統計年報」をもとに筆者作成

常総線も水海道駅以北の線区(通称:北線)は利用者の少ない区間で、今後の動向が気になるところです。もっとも、代替バスでは輸送が難しいため鉄道が適していると考えられますが、赤字額の大半が水海道~下館で生じていますし、今後の利用状況によってはみなし上下分離などの支援も検討していく必要があるかもしれません。

※沿線自治体と協議を進めている路線は、ほかにも複数あります。各路線の協議の進捗状況は、以下のページよりご覧いただけます。

【関東】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
関東地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk2_000053.html

常総線活性化支援協議会(常総市)
https://www.city.joso.lg.jp/kurashi_gyousei/kurashi/shisetsu_koukyou/public_transport_institution/kyougikai_doumeikai/jousousen_gaiyou.html

常総線活性化支援協議会(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000119420.pdf

令和4年度龍ケ崎市地域公共交通協議会(第1回)
https://www.city.ryugasaki.ibaraki.jp/shisei/johokokai/huzokukikanseido/huzokukikankaigiroku/fuzoku-kaigiroku/2016072200130.files/R4427S.pdf

サイクルトレイン(常総鉄道)
https://www.kantetsu.co.jp/train/cycletrain

鉄道駅周辺を中心とする常総地域の活性化(国土交通省)
https://www.mlit.go.jp/common/000049100.pdf

広報とりで(2021年11月15日号)
https://www.city.toride.ibaraki.jp/koho/shise/kohokocho/kohoshi/kohotoride/2021backnumber/documents/koho_toride_20211115_p3.pdf