輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄リスト(2016~2023年度)

輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄事業者 コラム

大量輸送を得意とする鉄道は、輸送密度2,000人/日以上の路線で、そのメリットを発揮できるといわれます。一方で、利用者の少ない第三セクター鉄道や中小私鉄は運賃収入だけで経営できず、沿線自治体の支援を受けながら運行を続ける事業者も少なくありません。

ここでは、輸送密度2,000人/日未満の第三セクターおよび中小私鉄の路線をピックアップし、近年の推移を掲載しています。あわせて、上下分離方式の導入や赤字補てんなど事業者に対する自治体の公的支援も紹介します。

北海道・東北の輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄リスト

事業者20162017201820192020202120222023公的支援
道南いさりび鉄道575531512479417421465438
弘南鉄道(大鰐線)623609558498390400406335
津軽鉄道402418399380245280377358
三陸鉄道305309321410232232248263
秋田内陸縦貫鉄道256255261260168166201234
由利高原鉄道388338308264215281317327
山形鉄道533513526403345385385402
阿武隈急行1,8031,7641,7551,4569871,0768901,299
会津鉄道668707675628393451495557
※黒の事業者名は第三セクター、青の事業者名は私鉄です。

北海道と東北には、利用者が少なく経営の厳しい鉄道事業者が多くみられます。そのため、沿線自治体から支援を受ける事業者がほとんどですが、自治体の財政状況も厳しく「支援のあり方」が議論される路線も少なくありません。

福島県と宮城県を走る阿武隈急行では、一部路線の存廃に踏み込んだ協議がされましたが、2025年1月22日の協議会で全線存続の方針を確認。その後、線路などの「下」の維持管理費を沿線自治体が負担する「みなし上下分離」の導入も決まりました。

秋田内陸縦貫鉄道と由利高原鉄道に支援する秋田県では、国の交付金などの活用により自治体負担を抑制。事業者に対する支援は手厚くなり、両事業者は2034年度末までの存続が確定しています。

一方で、弘南鉄道大鰐線は2024年11月27日に開かれた沿線自治体の会議で、弘南鉄道が運行休止を申し入れ。沿線自治体も容認したことで、2027年度末に事実上の「廃止」となる予定です。

※北海道・東北地方の赤字ローカル線をめぐる協議の進捗情報は、以下のページよりご覧になれます。

【北海道】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
北海道地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。
【東北】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
東北地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

関東の輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄リスト

事業者20162017201820192020202120222023公的支援
ひたちなか海浜鉄道1,6061,6821,6931,7731,1871,7781,8391,929
鹿島臨海鉄道(大洗鹿島線)1,9231,8591,8751,8041,2971,3851,5121,589
野岩鉄道610657613540205262259348
真岡鉄道1,3751,1831,1611,1228189391,0551,063
わたらせ渓谷鉄道415382379375218238285317
上毛電気鉄道1,8341,8191,8351,8081,4671,5501,5351,597
銚子電気鉄道657639583593506558688683
京成電鉄(東成田線)1,7181,7241,8241,7971,5041,5641,7321,931
芝山鉄道1,4681,5131,5431,4341,1391,1441,3081,418
小湊鉄道1,1711,1461,0821,073745739810756
山万1,2071,1831,1171,092792764848890
いすみ鉄道566540540385294294364
※黒の事業者名は第三セクター、青の事業者名は私鉄です。

関東でも、沿線自治体から公的支援を受けている鉄道事業者が多くみられます。

すでに「みなし上下分離」を導入している上毛電気鉄道では、群馬県が支援の見直しなどを目的に2023年より協議を続けてきました。群馬県は、わたらせ渓谷鉄道と上信電鉄でも、同じく協議。その結果、県や沿線自治体の支援を拡充することで、3事業者とも全線存続が決まっています。

現在は自治体から支援を受けていない小湊鉄道ですが、2023年4月に財政支援を要請しています。沿線自治体は、国の社会資本整備総合交付金を視野に、同年7月から準備調整会議を開始。しかし、沿線自治体が示した案が一部線区のみに対する支援であったことから小湊鉄道が反発し、支援要請を取り下げました。今後の動きが注目されます。

※関東地方の赤字ローカル線をめぐる協議の進捗情報は、以下のページよりご覧になれます。

【関東】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
関東地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

中部の輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄リスト

事業者20162017201820192020202120222023公的支援
えちごトキめき鉄道(日本海ひすいライン)1,0651,0511,017968753820881902
北越急行1,3581,3401,3951,2937228241,0111,014
富山地方鉄道(立山線)795810920872476510617794
富山地方鉄道(不二越線)1,0681,0951,1601,2691,0531,1091,0641,074
富山地方鉄道(上滝線)1,1061,1351,5711,5311,3471,3881,3641,334
北陸鉄道(石川線)1,8681,9301,9521,8771,3141,3911,4931,629
のと鉄道799733745735492538606604
えちぜん鉄道1,8141,8051,8591,8161,5221,4631,6411,775
上田電鉄1,7131,6511,6581,4158061,1171,2631,314
岳南電車1,0011,0341,0481,004764764894915
大井川鉄道693768761692262355332284
天竜浜名湖鉄道766783751756574618667704
明知鉄道515517554517407342369416
長良川鉄道363339372364245249341388
樽見鉄道642608602598404551740638
東海交通事業523520550540483520552545
※黒の事業者名は第三セクター、青の事業者名は私鉄です。

北陸新幹線の開業にともない、経営状況が一変した北越急行。赤字に転落したことを受け、2016年度より新潟県から鉄道設備の更新に対する支援を受けています。ただ、運行に対する赤字は内部留保で補てんしており、沿線自治体からの支援は現段階では受けていません。

北陸鉄道では2025年度から、みなし上下分離に移行。線路や駅といった鉄道施設にかかる経費は、沿線自治体が負担します。支援額は、2025年度から15年間で約132億3,000万円です(国の補助を含む)。

富山地方鉄道でも、みなし上下分離を軸とした協議が進んでいます。立山線と不二越・上滝線では、みなし上下分離に移行する見通しです。ただ本線は、一部線区の存廃も議論されており予断の許さない状況です。

上田電鉄は、2019年の台風で流出した千曲川橋梁について、再建した鉄道橋を自治体が保有。橋梁のみに上下分離方式を採用しています。

東海交通事業は、JR東海が下を保有する「民民の上下分離方式」を採用しています。赤字に対する自治体支援は、受けていません。

※中部地方の赤字ローカル線をめぐる協議の進捗情報は、以下のページよりご覧になれます。

【中部】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
中部地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

近畿の輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄リスト

事業者20162017201820192020202120222023公的支援
近江鉄道1,8651,9021,8521,7861,3711,5191,6301,737
信楽高原鉄道972958930986701736761774
京都丹後鉄道830831775738476514623658
紀州鉄道230205145178239239
北条鉄道727695718700395493541579
※黒の事業者名は第三セクター、青の事業者名は私鉄です。

近畿の第三セクターや中小私鉄には、上下分離方式を採用している事業者がいくつかみられます。

滋賀県では、信楽高原鉄道と近江鉄道で上下分離方式を導入。線路など「下」の保有者(第三種鉄道事業者)は、信楽高原鉄道が甲賀市、近江鉄道は沿線自治体などで構成する近江鉄道線管理機構です。

京都丹後鉄道(北近畿タンゴ鉄道)では、列車の運行を民間企業のWILLER TRAINSが、鉄道施設は第三セクターの北近畿タンゴ鉄道が保有・管理する、国内では珍しい形態の上下分離方式を採用しています。

鉄道事業の譲渡先を探していると報じられた紀州鉄道。多額の赤字を引き受ける事業者を見つけるには、沿線自治体の公的支援も不可欠でしょう。和歌山県と御坊市の今後の動きに、注目が集まります。

※近畿地方の赤字ローカル線をめぐる協議の進捗情報は、以下のページよりご覧になれます。

【近畿】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
近畿地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

中国・四国の輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄リスト

事業者20162017201820192020202120222023公的支援
若桜鉄道404407413383349344384371
一畑電車1,5621,7091,5941,6021,0661,1551,3641,485
井原鉄道1,0571,0508851,023755781838862
錦川鉄道28829625926822321589220
阿佐海岸鉄道127153136135111225101111
土佐くろしお鉄道907908874848635658745763
※黒の事業者名は第三セクター、青の事業者名は私鉄です。

若桜鉄道では、沿線自治体が鉄道施設を保有する上下分離方式を、2009年に導入しています。また、一畑電車と井原鉄道では、鉄道施設にかかる経費を沿線自治体が負担する、みなし上下分離を採用しています。

一畑電車では、2011年度より車両や鉄道施設の更新費用などを自治体が負担。2025年6月には、国の再構築事業を活用した支援も決まりました。2034年度までの10年間の支援額は、約80億円です。

錦川鉄道では、2023年3月に策定した地域公共交通計画で鉄道の「あり方」について言及。バス転換も含めて議論されましたが、「みなし上下分離で鉄道を存続したほうが自治体負担を抑えられる」と判断され、2026年2月に存続の方針が示されています。

※中国・四国地方の赤字ローカル線をめぐる協議の進捗情報は、以下のページよりご覧になれます。

【中国】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
中国地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。
【四国】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
四国地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

九州の輸送密度2,000人/日未満の三セク・私鉄リスト

事業者20162017201820192020202120222023公的支援
平成筑豊鉄道836844800827627647682692
甘木鉄道1,8951,9441,9942,0261,4891,6081,8061,926
松浦鉄道822825819804656685714783
島原鉄道1,2811,2001,1761,1928519091,0081,051
南阿蘇鉄道1911755261325089497
くま川鉄道1,1081,1731,1931,104667708718710
肥薩おれんじ鉄道752739734665486586594636
※黒の事業者名は第三セクター、青の事業者名は私鉄です。

南阿蘇鉄道は、2016年4月の熊本地震で長期不通に。2023年7月に全線復旧しています。このため、2022年度までの数値は一部区間で運転再開したときの実績です。また、豪雨災害を受けたくま川鉄道も2020年以降は運転再開区間の実績です。熊本県は、この2路線を「特定大規模災害等鉄道施設災害復旧補助」という国の制度を活用して復旧しています。この制度を利用するには、事業者の抜本的な経営改善が求められるため、2路線とも上下分離方式に移行しました。

一方で、肥薩おれんじ鉄道にも熊本県は支援していますが、鹿児島県では「全市町村による支援は2027年度末まで」ということが2023年12月に決定。2028年度以降は、新たな支援制度を検討することになりました。両県で協議した結果、2026年度よりみなし上下分離への移行が決定しています。

平成筑豊鉄道と島原鉄道では、存廃を含めた協議が進んでいます。いずれも、2026年3月までに今後の方針が示される予定です。存続となった場合は、その後自治体支援について話し合われることになります。

※九州地方の赤字ローカル線をめぐる協議の進捗情報は、以下のページよりご覧になれます。

【九州】赤字ローカル線の存続・廃止をめぐる協議会リスト
九州地方の赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

自治体負担も限界…支援のあり方が問われる時代に

第三セクターや中小私鉄のなかには、地域ぐるみで利用促進などの取り組みを続けるところも多いです。しかし、沿線地域の少子化や過疎化、モータリゼーションの進展などの影響により、利用者の減少は続いています。一方で支援する自治体も、過疎化の影響で税収が減っており、事業者に対する支援の見直しに迫られるところも増えています。

こうしたなかで2023年の地域公共交通活性化再生法の改正により、ローカル線に対する国の支援が手厚くなりました。これを機に、各地で「支援のあり方」の議論が活発化。国の制度を活用しながら鉄道の維持をめざす自治体もあれば、負担の大きさから支援を拒む自治体も見られます。

とくに赤字額の大きい路線では、鉄道の存廃に踏み込んだ議論もされています。採算性だけで廃止を決められないことは、自治体も理解しています。しかし、無理に残すと膨大な借金を未来に残す可能性があるため、慎重に判断せざるを得ない状況です。

人口減少のスピードは、今後ますます加速化します。将来を見据えて支援を続けるか否かの分岐点を探る自治体は、これからも増え続けるでしょう。

その他のデータ記事

※JRローカル線の輸送密度1,000人/日未満の線区は、以下のページで紹介しています。

※通勤通学で鉄道を利用する人の割合を都道府県別にまとめた記事は、以下のページで紹介します。

※輸送密度ベースで、JR赤字ローカル線の「減少率」を調査した記事は、こちらで紹介しています。

※JR赤字ローカル線(輸送密度2,000人/日未満の線区)の営業係数ランキングは、こちらで紹介しています。

参考URL

鉄道統計年報
https://www.mlit.go.jp/tetudo/tetudo_tk6_000032.html

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