輸送密度1,000人/日未満のJR線区リスト(2016~2022年度)

輸送密度の低い久留里線の列車 コラム

赤字ローカル線の「あり方」について、JR旅客各社と沿線自治体が話し合う「特定線区再構築協議会(以下、再構築協議会)」は、輸送密度1,000人/日未満の線区が優先対象になります。ただ、新型コロナウイルスの影響で利用者が減少した線区は、今後回復する可能性があるため、協議会の対象から外れる場合があると考えられます。

そこで、コロナ禍前(2016年以降)から輸送密度1,000人/日未満の線区を、JR旅客各社の公表データをもとにまとめした。なお、表中の赤字は、輸送密度200人/日未満の極めて利用者が少ない線区です。

※JR北海道、JR東日本、JR四国は、2023年度分も追記しています。

JR北海道の輸送密度1,000人/日未満の線区

線名線区20162017201820192020202120222023都道府県
宗谷線稚内~名寄362352335316165174209252北海道
石北線上川~網走880821779710404420498608北海道
釧網線東釧路~網走432374380372236245294356北海道
根室線滝川~富良野384428419386190201266384北海道
根室線釧路~根室435264250238150174190221北海道
室蘭線沼ノ端~岩見沢484439412388305300326325北海道
日高線苫小牧~鵡川463449462528476387398390北海道
函館線長万部~小樽646652625618349340479569北海道
※函館本線(長万部~小樽)は、北海道新幹線札幌延伸時に廃止予定。
※線名をクリックすると、沿線自治体とJR北海道の協議会の流れを解説したページにリンクします。

JR北海道では、2016年の「当社単独では維持することが困難な線区」の公表以降、輸送密度2,000人/日未満の線区の沿線自治体と協議を進めています。すでに利用促進などの計画(アクションプラン)も実施しており、計画最終年にあたる2023年度中には何らかの方向性が示される予定です。

なお、JR北海道の黄線区におけるアクションプランについては、以下の記事で詳しく解説しています。

JR東日本の輸送密度1,000人/日未満の線区

線名線区20162017201820192020202120222023都道府県
津軽線青森~中小国763740735720604556516483青森
津軽線中小国~三厩116106115107107988061青森
大湊線野辺地~大湊590572578533288297392455青森
八戸線鮫~久慈563507493454333318309331青森、岩手
五能線五所川原~深浦635604587548383389354447青森
五能線深浦~能代363350335309177180160241青森、秋田
奥羽線湯沢~新庄462438424416212229262291秋田、山形
山田線盛岡~上米内379375360358236219217227岩手
山田線上米内~宮古11212414815480616471岩手
釜石線花巻~遠野958945936897575644739756岩手
釜石線遠野~釜石632619586583328339399411岩手
北上線北上~ほっとゆだ458424442435327314368388岩手
北上線ほっとゆだ~横手122126134132726790101岩手、秋田
大船渡線一ノ関~気仙沼838838796754514545572588岩手、宮城
気仙沼線前谷地~柳津268246227232189206200199宮城
花輪線好摩~荒屋新町445441440418334348346352岩手
花輪線荒屋新町~鹿角花輪9589867860585562岩手、秋田
花輪線鹿角花輪~大館552579580537524486448441秋田
陸羽東線鳴子温泉~最上95101857941444451宮城、山形
陸羽東線最上~新庄446394363343289306254229山形
陸羽西線新庄~余目389401345343163192148129山形
左沢線寒河江~左沢910901910875742761791782山形
米坂線米沢~今泉906856822776641621573539山形
米坂線今泉~小国282270274298248226161136山形
米坂線小国~坂町18417518016912112410586山形、新潟
磐越東線いわき~小野新町331320309273196200203216福島
磐越西線喜多方~野沢612624569534429402357398福島
磐越西線野沢~津川159163133124698070102福島、新潟
磐越西線津川~五泉634652587528408413394426新潟
只見線会津坂下~会津川口199190181179141124182206福島
只見線会津川口~只見37302827151279103福島
只見線只見~小出1141131071018269107121福島、新潟
水郡線磐城塙~常陸大子253236209152109139143147福島、茨城
久留里線久留里~上総亀山122103968562555464千葉
弥彦線弥彦~吉田543504503521395388442473新潟
越後線柏崎~吉田871806729719618637639629新潟
上越線越後湯沢~ガーラ湯沢846810753618414728751775新潟
飯山線越後川口~津南441421421405359342355342新潟
飯山線津南~戸狩野沢温泉15612412610677637684新潟、長野
飯山線戸狩野沢温泉~飯山600541543503416406410414長野
吾妻線長野原草津口~大前383379364320236255355260群馬
小海線小淵沢~小海492517500450283300359379長野
中央線辰野~塩尻(辰野支線)617592583547362350433490長野
大糸線信濃大町~白馬867840797762215550666770長野
大糸線白馬~南小谷292279249215126136188189長野
※線名をクリックすると、沿線自治体とJR東日本の協議会の流れを解説したページなど、関連ページにリンクします。

津軽線の蟹田~三厩間は、2023年1月より「今別・外ヶ浜地域交通検討会議」で、沿線自治体とJR東日本との協議が始まっています。また、久留里線の久留里~上総亀山間も2023年3月にJR東日本が協議を申し入れ、協議会が設置される予定です。

その他、大湊線、磐越東線、陸羽東線などの沿線自治体では、自治体主導で任意の協議会や検討会を設置して話し合いを進めています。ただ、輸送密度が200人/日を割り込む極端に利用者の少ない線区は、県境に多く存在します。こうした路線は、国の関与が必要な再構築協議会の対象になることが予測されるでしょう。

なお、只見線の会津川口~只見間は、公有民営の上下分離方式で運行されており、再構築協議会の対象にはならないでしょう。

JR東海の輸送密度1,000人/日未満の線区

線名線区201620172018201920202021対象都道府県
名松線松阪~伊勢奥津288260261287208195三重
※線名をクリックすると、沿線自治体とJR東海の協議会の流れを解説したページにリンクします。

JR東海は、線区別に細かく区切った輸送密度および収支を公表していません。ここでは、国土交通省「鉄道統計年報」より、JR東海管内の路線別輸送密度を調査。1,000人/日未満は、名松線のみとなっています。

なお、JR東海の金子前社長は2022年8月の記者会見で、線区別の収支を公表しない考えを示しています。また、2023年に就任した丹羽社長は、鉄道の廃止やバス転換について「現時点で予定はない」と4月の記者会見で話しています。

JR西日本の輸送密度1,000人/日未満の線区

線名線区2016201720182019202020212022都道府県
大糸線糸魚川~南小谷1001041021025055108新潟、長野
越美北線越前花堂~九頭竜湖423373378399260295318福井
姫新線播磨新宮~上月935938910932750774822兵庫
姫新線上月~津山435439391413346358386兵庫、岡山
姫新線津山~中国勝山888906813820663649640岡山
姫新線中国勝山~新見326343310306132136132岡山
山陰線城崎温泉~浜坂817801768693506606721兵庫
山陰線浜坂~鳥取941965967921798738768兵庫、鳥取
山陰線益田~長門市282296266271238223231島根、山口
山陰線長門市~小串・仙崎380362358351290292273山口
因美線東津山~智頭195179162179132131130岡山、鳥取
木次線宍道~出雲横田204204200277198220237島根
木次線出雲横田~備後落合37183554広島、島根
福塩線府中~塩町206200162162150144160広島
芸備線備中神代~東城81867381808089岡山、広島
芸備線東城~備後落合91391191320広島
芸備線備後落合~備後庄原22523819662636675広島
芸備線備後庄原~三次381348312327広島
山口線益田~津和野575612585535310317417島根
山口線津和野~宮野760770716678353400495島根、山口
小野田線小野田~居能 など470460457444344346371山口
美祢線厚狭~長門市562636541478366366377山口
※加古川線の2016~2018年の輸送密度は、厄神~谷川間で算出。
※芸備線(三次~下深川間)の2016~2018年の輸送密度は、三次~狩留家間で算出。
※線名をクリックすると、沿線自治体の協議会の流れを解説したページにリンクします。

JR西日本管内では、大糸線や芸備線をはじめ「利用促進」を目的とした沿線自治体との協議会は、数多く存在します。しかし、特定赤字路線の「あり方」まで踏み込んだ協議会は、2023年4月10日現在設置されていません。

JR西日本が、「ローカル線に関する課題認識と情報開示について」を公表してから1年。その間、兵庫県や岡山県など一部の自治体では任意の協議会や検討会を設置し、対策を進めているところもあります。

しかし、JR西日本の長谷川社長は2022年9月の定例会見で「地域公共交通のあり方について真正面からの議論が進捗している線区はない」と述べており、今後、特定路線に踏み込んで協議を申し入れていくことが予測されます。

JR四国の輸送密度1,000人/日未満の線区

線名線区20162017201820192020202120222023都道府県
予讃線向井原~伊予大洲457442381364280274307321愛媛
牟岐線阿南~牟岐700753690605425423437427徳島
牟岐線牟岐~海部248232212186134146168153徳島
予土線北宇和島~若井333340312301205195220150愛媛、高知
※牟岐線(牟岐~海部)は、2021年より牟岐~阿波海南で算出。

JR四国管内でも、利用促進が主の協議会は存在しますが、特定赤字路線の「あり方」まで踏み込んだ協議会は設置されていません(2023年4月10日現在)。

JR四国の西牧社長は、2022年10月の記者会見で「2025年度までに協議を始めたい」と述べています。また、協議の進め方について2023年3月の記者会見で「まず4県とお話しするのが順序かなと思っている」と話し、各県を窓口に協議を申し入れる考えを示しています。

JR九州の輸送密度1,000人/日未満の線区

線名線区2016201720182019202020212022都道府県
筑豊線桂川~原田512534467297322385福岡
筑肥線伊万里~唐津236227222214180184196佐賀
豊肥線肥後大津~宮地644768熊本
豊肥線宮地~豊後竹田1549910196109129171熊本、大分
豊肥線豊後竹田~三重町954947951917853786806大分
肥薩線八代~人吉478603455414熊本
肥薩線人吉~吉松108138105106熊本、宮崎、鹿児島
肥薩線吉松~隼人758719656605480518493鹿児島
吉都線吉松~都城466474465451408397394宮崎、鹿児島
指宿枕崎線指宿~枕崎301306291277255240220鹿児島
日南線油津~志布志222210193199171宮崎、鹿児島
※災害により不通だった線区の年度は「-」で表示。

肥薩線の八代~吉松間は、2022年3月より「JR肥薩線検討会議」で、災害復旧を含めて話し合いが続いています。また、翌4月には「JR肥薩線再生協議会」を設置し、復旧後の取り組みについても議論されているようです。

上の表に記載していませんが、日田彦山線の添田~夜明間は「BRTひこぼしライン」として、2023年夏にBRTで運行が再開される予定です。

災害が鉄道の存廃につながるケースの多いJR九州。ただ、肥薩線や日田彦山線よりも成績のよくない路線は複数あります。JR九州の古宮社長は、2023年3月の佐賀新聞社のインタビューに対し「法律ができれば、すぐに話しに行こうと思う」と、協議会の設置を求めており、2023年度中に協議が始まる線区が出てきそうです。

データにはデータで勝負する

協議会において鉄道事業者は、輸送密度の推移だけでなく各駅の乗車人員、路線ごとの収支、営業係数など、さまざまなデータを提示してきます。これらのデータに対して「地域の足」「観光」といったキーワードで反論しても、その根拠を示せなければ鉄道の存続は難しいでしょう。なかには、客観的なデータを見せられ畏縮してしまい、廃止を認める自治体も少なくありません。

しかし、その地域における鉄道の価値は、事業者が公表する数値だけでは計れません。ならば、事業者が持たないデータを自治体が準備し、総合的に判断することも赤字ローカル線の廃止を防ぐうえで重要なポイントになるでしょう。

たとえば、沿線住民へのアンケートから鉄道の必要性を示すデータを集める方法もあります。あるいは、そのアンケートからクロスセクター効果に代表される鉄道の社会的便益を試算し、自治体が相当の支援を続けることで廃止を避けた路線もあります。

鉄道が地域にもたらす価値は、路線ごとに異なります。沿線自治体が、その地域における鉄道の価値を示すデータや報告書を用意できるかも、赤字ローカル線の存廃を判断するうえで重要な要素になってくるのです。

※第三セクターや中小私鉄の輸送密度2,000人/日未満の線区リストは、以下のページで紹介します。

※輸送密度ベースで、JR赤字ローカル線の「減少率」を調査した記事は、こちらで紹介しています。

※第三セクターや私鉄を含めた、輸送密度1,000人/日未満線区の協議会の情報は、こちらのページにまとめています。

輸送密度1,000人未満/日の赤字ローカル線の協議会リスト
輸送密度1,000人/日に満たない赤字ローカル線の存続・廃止を検討する、鉄道事業者と沿線自治体の協議会の一覧です。

※再構築協議会の基本方針や対象線区の予想は、以下のページで解説します。

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