通勤通学に鉄道を利用する人の割合が高い都道府県ランキング

通勤通学に鉄道を利用する人の割合 コラム

「鉄道は地域の足だ」と、赤字ローカル線の廃止に反対する自治体の声をよく耳にします。その一方で、沿線住民のほとんどがマイカーなどで通勤通学し、鉄道が使われていない地域が多いのも事実です。

鉄道が本当に「地域の足」といえるところは、どこなのでしょうか。それを客観的に示すデータが、国勢調査にあります。ここでは国勢調査のデータをもとに、通勤通学の移動手段として鉄道・軌道を利用している人の割合を、都道府県別に集計。割合が高い順にランキング形式でまとめました。

通勤通学者の全数に対する鉄道利用者の割合を集計

5年ごとに実施される国勢調査では、通勤通学の移動手段についても調査しています。移動手段の項目には、鉄道(路面電車などの軌道を含む)、乗合バス(路線バス)、自家用車、自転車など8種類あり、このうち一種類しか使わない人もいれば、「鉄道と乗合バス」「自転車と鉄道」といった複数の手段を利用している人もいます。国勢調査では、これらを組み合わせたあらゆるパターンの移動実態も集計しているのです。

これから紹介するランキングは、路線バスや自転車などで最寄り駅まで通う人も含め、通勤通学者の全数に対して鉄道を使う人の割合をまとめています。このため、「鉄道のみ利用する人」の割合を示す他のレポートと数値が異なる点はご了承ください。また、買い物や通院など通勤通学以外で利用する人は除外しています。

ちなみに、全国平均は25.19%です。

通勤通学の鉄道利用率が高い都道府県TOP10

まずは、鉄道で通勤通学している人の割合が高い都道府県TOP10を紹介します。なお、表の右側には利用者の少ない鉄道路線(輸送密度1,000人/日未満の主な線区)を記載しています。

順位都道府県割合利用者の少ない主な路線
1東京都59.68%
2神奈川県51.66%
3千葉県41.76%JR久留里線(久留里~上総亀山)銚子電鉄いすみ鉄道
4大阪府41.52%
5埼玉県39.40%
6奈良県35.32%
7兵庫県33.74%JR山陰線(城崎温泉~鳥取)JR姫新線(播磨新宮~新見)北条鉄道
8京都府28.62%京都丹後鉄道
9愛知県22.04%東海交通事業
10滋賀県19.82%信楽高原鐵道
※リンクのある鉄道路線は、沿線自治体と鉄道事業者との協議会を解説したページに遷移します。

上位の都府県は、誰もが想像できる結果でしょう。東京都と神奈川県では、2人に1人以上が毎日鉄道を使って通勤通学しています。このうち東京都は、マイカー通勤者の割合が8.48%しかなく、全国最下位です。2位の神奈川県は、乗合バスと併用する鉄道利用者が10.57%と全国トップ。二次交通がうまく機能していることがうかがえます。

3位の千葉県には、JR久留里線やいすみ鉄道など、利用者の少ない鉄道路線があります。これらの沿線自治体ではマイカー通勤者の割合が6割以上と高く、鉄道が苦戦する一因になっています。

10位には、滋賀県がランクイン。JR、京阪、近江鉄道、信楽高原鐵道など路線が多いことも、ランクインした理由でしょう。滋賀県では、公共交通の赤字補助を地方税でまかなう「交通税」の導入について議論されています。マイカー利用者からの反対意見もあるようですが、公共交通利用者の多い県ですから賛同を得やすいかもしれません。

なお、全国平均を上回っているのは、8位の京都府までです。

通勤通学の鉄道利用率が高い都道府県TOP11~20

続いて、11位から20位のランキングです。

順位都道府県割合利用者の少ない主な路線
11福岡県18.08%JR筑豊本線(桂川~原田)/平成筑豊鉄道
12宮城県16.86%JR気仙沼線JR陸羽東線(鳴子温泉~新庄)JR大船渡線
13北海道15.03%JR宗谷線(稚内~名寄)JR石北線(上川~網走)道南いさりび鉄道
…など
14広島県12.86%JR芸備線(備中神代~三次)JR木次線/JR福塩線(府中~塩町)
15茨城県11.13%JR水郡線(磐城塙~常陸大子)
16三重県10.70%JR名松線
17岐阜県9.37%明知鉄道長良川鉄道樽見鉄道
18和歌山県8.96%紀州鉄道
19静岡県7.95%大井川鐵道天竜浜名湖鉄道
20岡山県7.28%JR姫新線(播磨新宮~新見)JR因美線(東津山~智頭)
…など
※リンクのある鉄道路線は、沿線自治体と鉄道事業者との協議会を解説したページに遷移します。

11位以下は、輸送密度1,000人/日未満の鉄道路線を抱える道県が、多数を占めるようになります。

13位には、北海道がランクイン。札幌市では、地下鉄やJRで通勤通学する人が多く、31.47%が鉄道を利用しています。一方、道内第二の都市・旭川市の場合、鉄道の割合が1.01%しかなく、マイカー通勤(65.96%)がほとんどです。こうした地域差が、鉄道の存廃協議会で自治体間の「温度差」となって現れ、うまくまとまらない一因になるのでしょう。

14位の広島県と20位の岡山県は、JR芸備線を抱えます。こちらも沿線自治体ごとの割合をみると、鉄道は庄原市(広島県)が0.59%、新見市(岡山県)が3.26%、マイカー通勤はともに約77%です。この状況で、鉄道利用者を増やすのは容易ではないと思われます。

17位の岐阜県は、赤字ローカル線への支援額が全国トップクラスの県です。公的支援にくわえ、沿線自治体はさまざまな利用促進策を実施しており、鉄道利用者の確保につながっています。

通勤通学の鉄道利用率が高い都道府県TOP21~37

続いて、21位から37位まで一気に紹介します。

順位都道府県割合利用者の少ない主な路線
21栃木県7.11%野岩鉄道わたらせ渓谷鐵道
22香川県6.79%
23長野県6.29%JR飯山線JR大糸線(信濃大町~南小谷)/JR小海線(小淵沢~小海)
…など
24富山県6.08%富山地方鉄道(立山線)
25山梨県5.93%
26群馬県5.89%JR吾妻線(長野原草津口~大前)わたらせ渓谷鐵道
27新潟県5.58%JR大糸線(南小谷~糸魚川)JR飯山線/JR弥彦線(弥彦~吉田)
えちごトキめき鉄道(日本海ひすいライン)…など
28佐賀県5.58%JR筑肥線(伊万里~唐津)
29山口県5.24%JR山陰線(益田~小串・仙崎)/JR小野田線/JR美祢線錦川鉄道
30長崎県5.11%松浦鉄道
31石川県4.50%のと鉄道
32福島県4.45%JR磐越東線(いわき~小野新町)/会津鉄道野岩鉄道
…など
33熊本県4.37%JR豊肥本線(肥後大津~豊後竹田)/南阿蘇鉄道肥薩おれんじ鉄道
…など
34鹿児島県4.35%JR指宿枕崎線(指宿~枕崎)JR肥薩線JR吉都線肥薩おれんじ鉄道
35岩手県4.27%JR山田線/JR釜石線/JR北上線JR花輪線三陸鉄道
…など
36大分県4.02%JR豊肥本線(宮地~三重町)
37愛媛県4.01%JR予讃線(向井原~伊予大洲)/JR予土線
※リンクのある鉄道路線は、沿線自治体と鉄道事業者との協議会を解説したページに遷移します。

21位の栃木県は、2023年8月に宇都宮ライトレールが開業しました。これにより鉄道利用者の増加が期待されますが、開業前の需要予測によると通勤通学者数は1日約7,700人。栃木県の通勤通学者総数は約90万人ですから、1%にも満たない状況です。とはいえ、今後の利用者増加に期待したいところです。

鉄道改革に熱心な富山県は24位、災害復旧後の鉄道の利活用に注力する福島県や熊本県なども、ここにランクインしています。いずれも割合の低い県ですが、観光を含めた定期外客の取り込みも期待できるため、頑張ってほしいところです。

27位の新潟県は、災害で長期不通になっているJR米坂線や、輸送密度が極めて低いJR大糸線を抱えます。えちごトキめき鉄道にも多額の支援をしている新潟県。今後の対応が注目されます。

通勤通学の鉄道利用率が低い都道府県ワースト10

ここからは、鉄道が地域の足としてあまり機能していないワースト10の県です。

順位都道府県割合利用者の少ない主な路線
38福井県3.97%JR越美北線
39鳥取県3.53%JR山陰線(城崎温泉~鳥取)/JR因美線(東津山~智頭)/若桜鉄道
40高知県3.53%JR予土線土佐くろしお鉄道
41秋田県3.10%JR五能線(五所川原~能代)秋田内陸縦貫鉄道由利高原鉄道
…など
42徳島県3.05%JR牟岐線(阿南~海部)/阿佐海岸鉄道
43山形県3.02%JR奥羽本線(湯沢~新庄)/JR陸羽東線(鳴子温泉~新庄)山形鉄道
44青森県2.67%JR津軽線JR大湊線弘南鉄道(大鰐線)津軽鉄道
…など
45島根県2.11%JR山陰線(益田~小串・仙崎)/JR木次線/JR山口線(益田~宮野)
46沖縄県2.05%
47宮崎県1.73%JR肥薩線JR吉都線JR日南線(油津~志布志)
※リンクのある鉄道路線は、沿線自治体と鉄道事業者との協議会を解説したページに遷移します。

そもそも鉄道路線の少ない県でもありますが、JRのほか福井鉄道とえちぜん鉄道を有す福井県は38位、弘南鉄道や津軽鉄道などもある青森県は44位です。

もっとも、路線が多いからといって利用者のニーズにあわなければ、鉄道は利用されません。ダイヤやサービスといったソフト面だけでなく、「駅を中心とした街づくり」に再開発するなどハード面の対応もなければ、利用促進が難しい地域もあるでしょう。

最下位は宮崎県。ゆいレールしかない沖縄県よりも、鉄道で通勤通学をする人の割合が低い結果です。宮崎県には、JR吉都線や日南線など利用者が極端に少ない路線が複数あり、今後どのような対応をしていくかが注目されます。

ワースト10の県は、マイカー通勤の割合が高い県とも重なりますが、「人口減少率の高い県」ともかぶるようです。青森県、秋田県、山形県、徳島県、高知県は、人口減少率の高いTOP10にもランクインしています。「鉄道がなくなると街が廃れる」とよくいわれますが、そもそも「鉄道が利用しにくい地域は廃れやすい」という見方もできるのかもしれません。

■人口減少率ワースト10の都道府県(国勢調査 2015年→2020年)

順位都道府県人口減少率
1秋田県-6.2%
2岩手県-5.4%
3青森県-5.4%
4高知県-5.0%
5山形県-5.0%
6徳島県-4.8%
7長崎県-4.7%
8新潟県-4.5%
9山口県-4.5%
10和歌山県-4.3%

普段使いの利用者を増やすには「潜在ニーズの調査」がポイントに

生活の足として、鉄道を日常的に利用する人を増やすには、街づくりを含めて思い切った改革が必要です。「駅前に高校や大学を移転する」「総合病院や大企業の支社を駅前で誘致する」など、鉄道を使わせるための目的地をつくることも一手でしょう。駅前に何もなく鉄道を使う理由がない地域だと、いくら利用促進策を頑張っても日常的に利用する人は増えません。

とはいえ、財政状況の厳しい自治体にとってできることは限られますし、闇雲に利用促進策を実施しても失敗すれば税金の無駄遣いです。

まずは、鉄道利用の「潜在ニーズがどれくらいあるのか」を調査するところから始めてはいかがでしょうか。住民アンケートなどで「鉄道を利用したくても、使えない」と課題を持つ人の声を集め、それを解決する利用促進策を実施するのが効率的です。

たとえば、「運行本数が少ない」という声が多いのであれば鉄道事業者と一緒に増便を検討したり、「バスとの接続が悪い」のが鉄道を利用しない理由であればバス事業者も含めてダイヤを調整するとよいでしょう。

こうした要望を、以前からしている自治体も多いですが、客観的なデータや協力姿勢を示さなければ、鉄道事業者は耳を貸しません。「潜在ニーズはこれだけある」「この人たちに向けて、こんな施策を実施すれば利用者は増やせる」「その施策の実施に自治体も協力する」と論理的な計画で自治体の積極姿勢を見せることが、鉄道の存続につながるのではないでしょうか。

※輸送密度ベースで、JR赤字ローカル線の「減少率」を調査した記事は、こちらで紹介しています。

参考URL

令和2年国勢調査「従業地・通学地による人口・就業状態等集計利用交通手段の種類数・利用交通手段,常住地又は従業地・通学地別通勤者・通学者数(15歳以上)-全国,都道府県」
https://www.e-stat.go.jp/stat-search/file-download?statInfId=000032214689&fileKind=0

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