【2025年3月31日】第11回JR肥薩線検討会議が開かれ、熊本県とJR九州は、八代~人吉の復旧に最終合意しました。2025年度より地質調査や駅の設計などが始まり、2033年の運行再開をめざします。
復旧費用は約235億円。このうち約9割を国と熊本県が負担します。また、復旧後の同線区では上下分離方式を導入。線路や駅といった鉄道施設は県と沿線自治体が保有・管理し、年間で約7億円を財政負担する見込みです。なお、1日の平均利用者数が1人以下の瀬戸石・海路・那良口の3駅は廃止になります。
2025年4月1日には、熊本県の木村知事とJR九州の古宮社長が復旧に関する最終合意書を交わしました。その後、記者会見に臨んだ木村知事は「鉄路復旧にたどり着き、うれしく思う。沿線の復旧復興、創造的な未来に向けて頑張りたい」と語っています。
【解説】川線の復旧は決まったが山線の復旧はいつ?
肥薩線の八代~人吉(川線)については、2024年4月3日の第7回JR肥薩線検討会議で復旧が確定。翌日には、熊本県とJR九州が「基本合意」しています。その後、上下分離方式の詳細や利用促進の具体案など詳細を詰める協議を経て、2025年3月31日に最終合意にたどり着きました。
上下分離方式に関しては、線路や駅などの「下」の部分は熊本県と沿線自治体が保有。JR九州は運行のみに徹するという、一般的な方式になる予定です。
また利用促進の具体案は、沿線自治体が策定した「JR肥薩線復興アクションプラン」をもとに実施されます。具体的には、自治体職員による積極的な利用をはじめ、球磨川を生かした観光誘客、二次交通の整備、くま川鉄道との直通運転など20項目が提示されました。
それぞれの利用促進案には、「輸送密度の増加幅」で数値目標を掲げていることもポイントです。八代~人吉の輸送密度は、被災前(2019年度)の414人/日から「600人/日に増やす」としています。これについて、「自治体職員の利用で14人/日の増加」「観光列車の運行で73人/日の増加」など、項目ごとに目標値を設定。これらの積み重ねで、輸送密度ベースで約250人/日の増加をめざすとしています。
なお、復旧後は既存の3駅が廃止されます。これについて熊本県の亀崎副知事は「沿線自治体と議論を尽くしたが、拠点性やにぎわい創出の策が出なかった」と述べています。JR肥薩線復興アクションプランでは、各駅の活用法や再整備についても検討されており、県と沿線自治体が責任主体となって駅を利活用していくことになります。このため、利用者が少なく、かつ拠点として活用しにくい駅に関しては廃止としたわけです。
さて、これらの施策は八代~人吉の線区で実施されるものです。災害で長期不通となっている肥薩線の線区は、ほかにも人吉~吉松(山線)があります。この線区に関しては、まだ何も決まっていません。人吉~吉松は、熊本・宮崎・鹿児島の3県にまたがっており、各県や沿線自治体とJR九州が、これから話し合うことになります。
これについて、熊本県の木村知事は「宮崎や鹿児島とつながったほうが活用も増える。両県知事に呼びかけ、了解を得た」と、すでに復旧に向けて動き始めていることを明らかにしています。
ただ、協議は難航するかもしれません。被災箇所や復旧費用は人吉~吉松のほうが少ないものの、利用者数は八代~人吉の4分の1程度。輸送密度は106人/日(2019年度)という、超閑散区間です。これまでの経緯から、JR九州が無条件で復旧するとは考えられませんし、観光誘客にくわえ沿線住民の利用を促す「マイレール意識の醸成」を求めてくるのは必至でしょう。
その求めに3県で意見を統一させ、各県や自治体の議会で承認を得て予算を確保するところにいくには、相当の時間が必要だと思われます。場合によっては、各県の考え方の違いから話がまとまらないことも想定されますし、こじれたら国の再構築協議会に移行する可能性もあるでしょう。
肥薩線以外にも赤字ローカル線を複数抱える3県が、人吉~吉松の鉄路の存在価値や活用法をまとめられるのか。新たな検討会議は、2025年度中に始まる予定です。
※肥薩線の復旧をめぐる熊本県とJR九州との協議は、以下の記事で詳しく解説しています。
その他の鉄道協議会ニュース
JR美祢線の代行バス増便実験「通学時の1往復のみ」継続へ
【2025年4月5日】災害で長期不通となっているJR美祢線で実施していた代行バス増便の実証実験について、JR西日本は2025年度も継続することを決めました。
この実証実験は、美祢線利用促進協議会の申し入れにより2024年10月に開始。増便本数は10本で、実験期間は2025年3月21日まででした。しかし、朝の快速バス1本を除き利用者数は10人前後と低迷。JR西日本は、実験を継続しない意向を示しました。
これに対して沿線自治体は、2025年1月23日の美祢線利用促進協議会で、通学利用者を中心に混雑する朝の時間帯のみの継続を要望します。この要望をJR西日本が受け入れ、1往復(2本)を残すことになったのです。なお、運行は平日のみ。高校の長期休暇期間は運休です。
※美祢線の復旧を巡る沿線自治体とJR西日本との協議は、以下の記事で詳しく解説しています。
JR米坂線の復旧に山形県知事「鉄路での復旧が望ましい」
【2025年4月3日】2025年3月26日に開かれたJR米坂線復旧検討会議の結果を受けて、山形県の吉村知事は「鉄道での復旧がもっとも望ましいと思う」と述べました。これは、定例会見で語ったものです。
3月26日の復旧検討会議では、JR東日本が「第三セクターへ移管すると年間5億~19億円」「バス転換は1億5,000万~2億円」という費用試算を提示しています。これについて吉村知事は「当初から鉄路での復旧を申し上げており、バス転換はめざしていない」と主張。鉄道での復旧を強調しました。
ただ、鉄道で復旧する場合の地元負担が大きいとしたうえで、「米坂線は鉄道ネットワークの一翼を担う重要な路線。その視点から、政府にサポートしてもらえるよう要望していきたい」と伝えています。
※米坂線の復旧に関する沿線自治体とJR東日本との協議の流れは、以下の記事で詳しく解説しています。
「蒲蒲線」の整備・営業構想を国土交通省が認定
【2025年4月4日】国土交通省は、東急電鉄などが申請していた新空港線(通称・蒲蒲線)の整備・営業構想について、都市鉄道等利便増進法にもとづき認定したと発表しました。
認定されたのは、東急蒲田駅と京急蒲田駅の800mの区間。東急多摩川線の矢口渡駅付近から地下で結び、将来的には東急東横線や京急空港線などへの乗り入れをめざしています。なお、営業構想は東急電鉄が申請していますが、整備構想については同社と太田区が出資する第三セクター「羽田エアポートライン」が申請しています。
国土交通省の認定を受け、今後は東急電鉄と羽田エアポートラインが協議をしながら「速達性向上計画」を策定。この計画が国土交通省に認定されたら、環境評価などの各種手続きを経て着工される予定です。整備期間は、2025年度下期から2041年度末としています。